部長と私の秘め事
 勿論、大好きな婚約者だし、エッチに抵抗がある訳じゃない。

 むしろ、沢山イチャイチャしたいし、甘えたい。

 だからこそ、全力で挑むのだ。

 私にも恵にも共通する事だけれど、私たちはすべき事を分かっていながら、羞恥心に邪魔されている。

 それを取っ払う事こそ、尊さんや涼さんが最も望んでいる事だ。

(今夜を楽しみにしてろ! ミコ! びっくりして目玉飛び出ても知らないもんね!)

 私はじわーっと赤面しつつ、おじゃがっこをまた食べ始める。

「これからランチ行くんだから、菓子はほどほどにな」

「お母さんがいる!」

「はぁ~い、ミコトママよ」

「いひひひひひ」

 私は尊さんとたわいのない話をし、約二時間半のドライブを楽しんだのだった。



**



 一言で軽井沢と言っても、範囲が広いのだけれど、私たちがランチに向かったのは北佐久(きたさく)郡 軽井沢町にある、ホテルの中のレストランだ。

 郊外にあるホテルとレストランが一体になった施設を、オーベルジュと言うらしい。

 緑に囲まれた中に、ドイツの街並みにありそうな小洒落た低層ホテルがある。

 尊さんはこういう建物をドイツのフロイデンベルクで見たらしいけれど、その洋式で間違いないのなら、ハーフティンバー様式と言うらしい。

 十二世紀頃にイギリス、ドイツ、フランスで流行った建物の様式で、柱や梁などをあえて外側に出す建て方だ。

 とても似ている様式で、イギリスのテューダー様式もあるけれど、ハーフティンバー様式を取り入れた上で、ドアや窓などにも特徴があるので、まったく同じとは言い切れないらしい。

 建物の前庭には、雰囲気のある街灯や、丸太で作られた木馬もある。……いや、頭に枝が刺さってるから、鹿かトナカイなのかな?

 庭には白いテーブルセットもあり、ここで白いワンピースを着た私が読書でもしたら、映えるのでは……? と妄想が捗るけれど、何せ暑い!

 私は写真を撮ったあと、ササッと屋内に避難した。

 階段を上がった先には、玄関ドアの前に樽や植物のプランターがあり、そこも雰囲気があるので写真に収める。

 そしてドアを開け、素敵空間に思わず「わぁ……」と声を漏らす。

 大きな窓からは周囲の森が見え、木製のテーブルや椅子を照らしている。

 解放感のある空間の中、天井からはハンギングプラントと言うのか、垂れ下がった植物やお花がランプと共にあり、女子ウケ抜群な内装だ。

「予約していた篠宮です」

 尊さんがスタッフさんに言うと、私たちは眺めのいい窓際の席に案内される。

 どうやらコース料理を食べられるらしく、好き嫌いやアレルギーの確認をされたので、意気込んで「何でも食べます!」と言った。

 ドリンクオーダーは、尊さんは車なので、二人で信州産の林檎ジュース、葡萄ジュースにした。

 アミューズは玉子を中心にカラフルな野菜が並べられた、ココットだ。

 そあとはこのレストランイチオシである、新鮮な野菜のビュッフェとなり、見ただけで映えだと分かる、色とりどりな野菜たちに対面する。

 円筒形のガラスの器に色んな野菜が入っているのだけれど、ミニトマトにしても、赤だけじゃなくて黄色やオレンジなど、色んな色がある。

 他にも緑の野菜の他に、紫玉葱やオレンジ、パプリカなど、カラフルな面々が揃っていた。

 お次の前菜も野菜がメインで、色を損なわないように茹でられた野菜が、正方形のプレートに並べられている。それを様々な調味料でいただく形になっていた。

 メインは蓼科(たてしな)牛を網焼きにした物で、その周りにも野菜が綺麗に並べられてある。

 デザートは人参のシフォンケーキにクリーム、フルーツが並べられた物だ。

「野菜もなかなかやりますね……」

 私は食後のコーヒーを飲みつつ、割と満足しているお腹をさすりつつ言う。

「でもこのあと、軽井沢食べ歩きするんだろ?」

「分かってるミコしゅき……」

「朱里の事は、もう大体分かってるよ……」

「いや、分かりませんよ? 尊さんの知らない私がいるかも……」

「こないだ、俺の服を抱き締めて寝てたのは知ってるけど……」

「うっ……」

 バレてないと思っていた事を指摘され、私は赤面する。

「ミテナーイ、ミテナーイ」

 私は尊さんに向かって人差し指を向け、クルクルと回す。

「トンボじゃねぇんだから」

 彼はクスクス笑い、コーヒーを飲み終わったのを確認してから「もういいか?」と尋ねてくる。
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