部長と私の秘め事
「家族に何かお土産買っていくかな。何がいいかなぁ……」
「お義母さんには、信州味噌とかどうだ?」
「あっ、いいかもです。美奈歩は安定のスイーツかな。亮平が難しいんだよなぁ……」
「酒とか? いいワインがありそうだし。つまみになりそうな物もつけてみたら?」
「それだ」
私は両手の人差し指でピッと尊さんを指さし、安心してジュースを飲む。
気になる物を一通り飲み食いしたあと、私たちは部屋に戻る事にした。
お腹のエンジンはかかっていて、アイドリング状態だ。
**
月のや軽井沢に宿泊する際の夕食は、必ず宿泊施設でとると決まっておらず、先ほどのレストラン、部屋食、近くの施設に行って食べるなど、予約制で選べるようになっている。
私たちはあとに控える祭りのためにも、時短のためゆっくり部屋で食べる事にした。
部屋食は、部屋にあるメニューから選べるようになっていて、朝食、昼食、夕食、アフタヌーンティーがあり、それぞれ和食、洋食などに分かれている。
夕食は豚か牛かを選べるしゃぶしゃぶと、一般的な和食のお膳があり、お肉も魅力的だけど、ご当地の食材を使った料理を楽しみたいと思い、お膳を選んだ。
せっかく水辺の部屋なので、テラスでしっかり虫除けスプレーをかけたあと、外でご飯を楽しむ事にした。
テーブルの上にランタンを置き、私たちは向かい合わせに座ってご飯をつつく。
炊き込みご飯は一人一つで小さなお釜が配され、木製の蓋を開けると色とりどりの具材が顔を出す。
湯葉と真薯の入ったお吸い物に、おかず類は横長の箱になんと三段も入っている。
三段とも真ん中で区切られていて、片方には赤い漆塗りの丸いお皿があり、それぞれ天ぷら、お煮染め、お刺身がある。
反対側は四つに区切られていて、一口サイズのおかずが品良く並んでいた。
「美味しい宝石箱だ~!」
品数は沢山あればあるほど嬉しい私は、目を潤ませて写真を撮る。
中でも珍しいのは、長野県は鯉が有名という事で、鯉のお刺身や魚卵を使った料理がある事だ。
デザートはコロンとした丸っこいグラスの中に、フルーツのゼリー寄せが入っていた。
「風流ですねぇ……」
私は川のせせらぎを聞き、蝋燭でライトアップされた黒い池や、照明のついたヴィラや施設を眺めながら言う。
「いい所だから、一泊二日と言わず、もう少し滞在したいところだな」
「本当は都内デートで済むのに、軽井沢まで連れて来てくれて御の字ですよ」
「そっか」
尊さんはチラッと私を見て微笑む。
(う……)
本来は、ラブホデートだった。
彼は言葉にしなかったけれど、そう言いたかったのではないかと思い、一人で赤面する。
そのあとも今回の小旅行の感想を言いながら食事を続けたけど、なまじムードのあるテラスで食事をしたからか、どんどん恥ずかしくなってきた。
(セクシーランジェリーも持ってきたし、ちょっと勇気を出してちっちゃいお道具も持ってきた。……でも、どうやって切り出す? 〝そのつもり〟でこの旅行に臨んだ訳だけど、しょっぱなからお道具出して『さあ、やりましょう』? そんなの酷すぎる!)
考えれば考えるほどドツボに嵌まってしまい、冷や汗を掻く。
幸いな事に、夜で外にいるので赤面しているのはバレてないと思うけど……。
(はぁ……、『セックスしよっか! やっちゃう~?』ぐらい簡単に誘えたらいいのに……。どうにもこう、エッチって毎回緊張する……)
本当はご飯に集中して味わいたいのに、尊さんと会話しつつ、心の中では悩んでいるので頭が忙しい。
「はぁ……」
デザートを食べ終えて溜め息をつくと、尊さんが「美味かったか?」と尋ねてくる。
「…………オイシカッタデス…………」
胸がドッキンバッコンしてる私は、消え入りそうな声で返事をするしかできない。
「雰囲気はいいけど、早めに中に入るか」
ドキンッと胸が高鳴ったけれど、彼が言ったのはそうじゃないと分かってる。
「ソウデスネ。虫に刺されたら嫌ですし……」
私はぎこちなく返事をし、席を立つ。
「食器、『そのままでいいです』って言われたけど、中に入れたほうがいいですよね」
「だな。虫がついたら嫌だし」
頷き合った私たちは、食器類を中に運び始める。
ムードの良さと現実は紙一重だ。
食器を中に運び終えた私たちは、ドリンクを飲みつつソファに座り、まったりとガラス越しに外の景色を眺める。
けれど私の中ではサイレンが鳴り、警戒態勢だ。
指一本でも触れられたら、「ぴぎゃあっ!?」と悲鳴を上げて跳び上がりそうなぐらいにはドキドキしている。
「……朱里」
「お義母さんには、信州味噌とかどうだ?」
「あっ、いいかもです。美奈歩は安定のスイーツかな。亮平が難しいんだよなぁ……」
「酒とか? いいワインがありそうだし。つまみになりそうな物もつけてみたら?」
「それだ」
私は両手の人差し指でピッと尊さんを指さし、安心してジュースを飲む。
気になる物を一通り飲み食いしたあと、私たちは部屋に戻る事にした。
お腹のエンジンはかかっていて、アイドリング状態だ。
**
月のや軽井沢に宿泊する際の夕食は、必ず宿泊施設でとると決まっておらず、先ほどのレストラン、部屋食、近くの施設に行って食べるなど、予約制で選べるようになっている。
私たちはあとに控える祭りのためにも、時短のためゆっくり部屋で食べる事にした。
部屋食は、部屋にあるメニューから選べるようになっていて、朝食、昼食、夕食、アフタヌーンティーがあり、それぞれ和食、洋食などに分かれている。
夕食は豚か牛かを選べるしゃぶしゃぶと、一般的な和食のお膳があり、お肉も魅力的だけど、ご当地の食材を使った料理を楽しみたいと思い、お膳を選んだ。
せっかく水辺の部屋なので、テラスでしっかり虫除けスプレーをかけたあと、外でご飯を楽しむ事にした。
テーブルの上にランタンを置き、私たちは向かい合わせに座ってご飯をつつく。
炊き込みご飯は一人一つで小さなお釜が配され、木製の蓋を開けると色とりどりの具材が顔を出す。
湯葉と真薯の入ったお吸い物に、おかず類は横長の箱になんと三段も入っている。
三段とも真ん中で区切られていて、片方には赤い漆塗りの丸いお皿があり、それぞれ天ぷら、お煮染め、お刺身がある。
反対側は四つに区切られていて、一口サイズのおかずが品良く並んでいた。
「美味しい宝石箱だ~!」
品数は沢山あればあるほど嬉しい私は、目を潤ませて写真を撮る。
中でも珍しいのは、長野県は鯉が有名という事で、鯉のお刺身や魚卵を使った料理がある事だ。
デザートはコロンとした丸っこいグラスの中に、フルーツのゼリー寄せが入っていた。
「風流ですねぇ……」
私は川のせせらぎを聞き、蝋燭でライトアップされた黒い池や、照明のついたヴィラや施設を眺めながら言う。
「いい所だから、一泊二日と言わず、もう少し滞在したいところだな」
「本当は都内デートで済むのに、軽井沢まで連れて来てくれて御の字ですよ」
「そっか」
尊さんはチラッと私を見て微笑む。
(う……)
本来は、ラブホデートだった。
彼は言葉にしなかったけれど、そう言いたかったのではないかと思い、一人で赤面する。
そのあとも今回の小旅行の感想を言いながら食事を続けたけど、なまじムードのあるテラスで食事をしたからか、どんどん恥ずかしくなってきた。
(セクシーランジェリーも持ってきたし、ちょっと勇気を出してちっちゃいお道具も持ってきた。……でも、どうやって切り出す? 〝そのつもり〟でこの旅行に臨んだ訳だけど、しょっぱなからお道具出して『さあ、やりましょう』? そんなの酷すぎる!)
考えれば考えるほどドツボに嵌まってしまい、冷や汗を掻く。
幸いな事に、夜で外にいるので赤面しているのはバレてないと思うけど……。
(はぁ……、『セックスしよっか! やっちゃう~?』ぐらい簡単に誘えたらいいのに……。どうにもこう、エッチって毎回緊張する……)
本当はご飯に集中して味わいたいのに、尊さんと会話しつつ、心の中では悩んでいるので頭が忙しい。
「はぁ……」
デザートを食べ終えて溜め息をつくと、尊さんが「美味かったか?」と尋ねてくる。
「…………オイシカッタデス…………」
胸がドッキンバッコンしてる私は、消え入りそうな声で返事をするしかできない。
「雰囲気はいいけど、早めに中に入るか」
ドキンッと胸が高鳴ったけれど、彼が言ったのはそうじゃないと分かってる。
「ソウデスネ。虫に刺されたら嫌ですし……」
私はぎこちなく返事をし、席を立つ。
「食器、『そのままでいいです』って言われたけど、中に入れたほうがいいですよね」
「だな。虫がついたら嫌だし」
頷き合った私たちは、食器類を中に運び始める。
ムードの良さと現実は紙一重だ。
食器を中に運び終えた私たちは、ドリンクを飲みつつソファに座り、まったりとガラス越しに外の景色を眺める。
けれど私の中ではサイレンが鳴り、警戒態勢だ。
指一本でも触れられたら、「ぴぎゃあっ!?」と悲鳴を上げて跳び上がりそうなぐらいにはドキドキしている。
「……朱里」