部長と私の秘め事
「なーに緊張してんだよ」

 さらに彼は私の耳たぶをフニフニと揉み、フェイスラインをスルッと撫でてくる。

「お……っ、お触り代、求めますよ……っ」

「ネコハラだ」

 小さく笑った尊さんは、私の顎を捉えてチュッとキスをしてきた。

「キスで払ったら駄目か?」

 至近距離で見た彼の眼差しがやけに妖艶で、照れる事も忘れてしまう。

 ――ずるいなぁ……。

 ――この人、いつも格好いい。

 私は口を曲げてたじろいだあと、彼の手を軽く握って囁いた。

「体で払ってください」

 言ってしまったあと、恥ずかしくなって黙っていると、尊さんは私の耳元に顔を寄せて囁いた。

「嫌って言うほど啼かせてやる」

 その低い声を聞いた瞬間、全身にゾクゾクとした愉悦が駆け抜ける。

 温泉に浸かっているだけでなく、体を火照らせてしまった私は、尊さんの指をキュッと握り、「…………にゃあ」と鳴いた。





 お風呂に上がったあと、尊さんに先に出てもらった。

 バスルームに入る前、私は例のセクシーランジェリーをバスタオルに挟み、洗面所に持って行っていた。

 彼も私が何か準備をしていたのは察していたのか、途中で口を挟む事はなかった。

 ……こういうの、途中で指摘されると、恥ずかしくて堪らないので……。

(うーん……)

 私は鏡に映った自分を見て、額に手を当てる。

「……えっちだ……」

 せっかく尊さんがお高いホテルをとってくれるのだからと、私もオーバドゥの下着で挑んだ。

 白いレースのセットなのだけれど、上半身はブラジャー……と言えるのか分からない、三角形の紐だ。

 ショーツは一応下着の形をしてくれているけれど、フロントからバックにかけてちっちゃいボタンがついていて、その気になれば開けゴマだ。

 加えてショーツにガーターベルト的な物がついていて、太腿では二重になった細いレースのバンドがある。実にエッチだ。

 他のブランドに、肝心な場所にパールがついている下着もあったけれど、具を巻き込んで事故を起こし、痛い思いをしそうなので今回は見送っておいた。

(それにしても白で落ち着いてしまったけど、良かったのかな。リサーチした時は黒とか赤とか、どピンクとか色々あって、何が尊さんの本能を掻き立てるか分からなかったもんなぁ……。本人に聞くのも恥ずかしいし)

 聞いたとしても、尊さんなら「朱里は何色を着ても似合う」って言いそうだ。

 嬉しいし、本心から言ってくれていると思うけれど、こういう時は困ってしまう。

「これで……、行ってみますか」

 鏡の中の自分に向かって呟いた私は、バスローブを羽織ってキュッとベルトを締め、「まるでセクシー女優が現場に向かうようだ」と思いながらドアを開けた。





(う……)

 室内の照明はグッと落ちていて、バスローブを羽織った尊さんがベッドの上で待っている。

「お……、お待たせしました」

 ベッドの前に立った私はそう言って、ぎこちなくマットレスの上に上がる。

「セクシーランジェリー着けてきてくれたのか?」

「……はい」

 ベッドの上に正座した私は、いつものようにふざける余裕もなく、小さく返事をした。

「見せて」

 ヘッドボードにもたれた尊さんは、余裕たっぷりに見えて憎たらしい。

「み、尊さんもバスローブ脱いでくださいよ。一人だけ防御力低くなるの嫌です」

「分かったよ」

 彼は小さく笑い、ライトグレーのバスローブを脱ぐ。

 すると間接照明に照らされて、鍛え上げられた体が露わになり、逞しい胸板や腹筋の凹凸を見ただけでドキドキする。

「……笑わないでくださいね」

 私は断りを入れ、静かにバスローブを脱いでいく。

 恥ずかしくなって胸元を隠そうとしたけれど、その前に両手首を握られる。

「隠すなよ」
< 637 / 693 >

この作品をシェア

pagetop