部長と私の秘め事
「あ、俺ビコ行きたいけどいい? すぐ近くだから」

 尊さんが軽く挙手して言い、彼が望みを言うのは珍しいので、私はビコが何なのか分からないながらも頷いた。

「行きましょう!」

 そのあと、本当に歩いて五分ぐらいの所にアボット・ストリートがあり、尊さんのお目当てのアクセサリーショップがあった。

 すぐ隣にタピオカミルクティーのお店があり、ショッピングのあとに飲み尽くす事を決意した。

「わぁ、面白い。格好いい」

 店内に並んでいるのはシルバーアクセサリーで、系統で言えばクロムハーツとか、ああいうゴツイ系に分類される。

 でもどちらかというと、ハワイとかにありそうな、一つ一つの形に意味があるアクセサリーで、曲線とトゲトゲを絶妙に表現した〝ペガサス〟や〝ワシの羽〟〝風〟とかが格好いい。

 そして男性が好みそうなデザインが多いかと思いきや、意外とお花やハートモチーフもある。

 お店には日本人スタッフがいて、ビコのアクセサリーが好きでここで勤めているようだ。

 スタッフのお兄さんの話では、単品だけじゃなく、ペンダントトップを重ねてつけるのもアリみたいで、私は好みの形を探して組み合わせてみる。

 それぞれの意味を知って選ぶのも素敵だけれど、身につけるなら気に入った形がいいなと思ったからだ。

「へぇ……、いっすね……」

 恵は女性的なアクセサリーよりは、こういう感じが好きみたいで、珍しく興味を持ったらしく色々見ている。

 ペンダントトップ一つにつき、一万円少しなので、尊さんが買い与えてくれるハイジュエリーみたいに、バカ高い訳じゃない。

 かといって安い訳でもないけど、長く使える記念のアクセサリーならほしいと思えた。

 結局、尊さんは〝風〟と〝ペガサス〟の合わせ技、私は〝花束〟、恵は〝牡鹿〟、涼さんは〝ドラゴンフレイム〟と〝サンクティ〟を買った。

 それぞれ、割と太くてしっかりめのチェーン、またはレザーネックレスも買った。

 現地らしい物を買ってホクホクした私たちは、タピオカミルクティーを飲みに行く。

 お店はとてもお洒落で、カフェとかドリンクスタンドというより、アーティスティックな雰囲気だ。

 カウンターのある側は白い壁で、その向かいはレンガの壁になっている。

 木製のテーブルセットがあり、明るい雰囲気の店内の壁には、沢山のアートが飾られてあった。

 メニューは英語と中国語で書かれてあって、残念ながら私たちはパッと理解できない。

 けれどイラストが描いてあるのと、人間翻訳機が二人いるので、オーダーには困らなかった。

 涼さんが英語で何が人気なのか尋ねると、アボカドレインフォレストという飲み物や、ブラウンシュガーパールタピオカティーが人気だと分かった。

 そのメニューには赤いハートマークがついていて、どうやらそれが目印みたいだ。

「尊さん……」

 私は彼の半袖をクイと引っ張る。

「みなまで言うな。好きなだけ飲め」

「アイアイサー!」

 心強い返事をもらった私は、アボカドとブラウンシュガーを攻める事にする。

 恵はチーズフォームを加えたマンゴーティー、尊さんは普通のタピオカミルクティー、涼さんはアボカドレインフォレストだ。

 さすがオーストラリアサイズというか、M、Lサイズの他にB……はビッグなのかな。漢字で『桶』と書かれた、一リットルのサイズもあった。

 私はLサイズにしておいたけれど、勿論恵に「一リットルいかんのか?」といじられた。

 お店の看板には『Meet Tea』と書かれてあるけれど、何だか見た事のある鹿の角のイラストもあり、もしかしたら東京にもある『ジ・アレイ』なのかもしれない。真相は闇の中だ。

「美味しかった」

 お店を出たあと、恵はうんうんと頷く。

「朱里、ステーキもシーフードも、ワニもカンガルーもある店あるけど、行くか?」

「行きます!」

 即答すると、ホテルからすぐ近くの川沿いにある、『ダンディーズ・ウォーターフロント』というお店に向かう事になった。

 どうやら人気店らしいけれど、尊さんがウェブ予約してくれたお陰で、少し待っただけで入る事ができた。

 おまけにラッキーな事に、川沿いのテラス席に案内してもらえた。

 店内はウッド調で統一され、黒い椅子と正方形のウッドテーブルが並んでいる。その席数、三百席あるそうでびっくりだ。

 テラス席は思っていた以上に広く、頭上に大きくせり出た屋根があるので、雨が降っても安心だ。
< 677 / 693 >

この作品をシェア

pagetop