部長と私の秘め事

 近くにはスーパーマーケットが沢山あって、中にはショッピングモールと言っていい規模の物もある。

 現地では、カートの事をトローリーと言うそうだ。

 エコの観点からビニール袋は勿論有料で、丈夫なエコバッグを買う事もできる。

 エコバッグもまた自分へのお土産になるかな、と思って、大きすぎない物を買う事にした。

「スーパーマーケットで、何を買うのがお勧めですか?」

 尊さんに尋ねると、〝速水の歩き方〟が教えてくれる。

「オーストラリアって畜産、農業大国でもあるんだよ。オージービーフが有名だけど、ハムも美味かった。朱里もきっと気に入るんじゃないかな。やや塩っ気が強いから、チーズとかと一緒に食べるといい」

「チーズも牛乳も美味しいよ。牛乳は、『フルクリームミルク』っていう、白と水色のボーダーのパッケージのがあるんだけど、それが濃くて美味しかったかな。あと、ジンジャービール。ビールってついてるけど、ノンアルコールのジュースだね。あと、この国らしいと言ったら、マカダミアナッツのパック……沢山入ってるから、四人でシェアして丁度いいかな? とか、フレッシュラズベリーとか、珍しいんじゃない? 美味しいよ」

「うわー! 全部買う!」

 私が大興奮すると、恵が「落ち着きなって」と背中をトントンしてくる。

「涼さん、あんまり唆さないでくださいよ。朱里がまんまるになる……」

「大丈夫! スーパーアカリン液が働いてるから!」

 先ほどから順調に消化しているようで、苦しさのピークは過ぎた。

 食べる事が大好きなので、本当にこの体に生まれて良かった。

 恵は化け物でも見るような目で私を見てから、「……あんたはそうだったよね……」と肩ポンしてきた。失敬な。

 そのあと、私たちは英語ばっかりのスーパーを歩き、尊さんと涼さんに商品の説明をしてもらいながら、欲しい物をカゴに入れていった。

 レジに行くと、商品をベルトコンベアみたいなのに載せて、スタッフさんがバーコードでスキャンしていく方式だ。

「面白いですね~」

「日本でも一昔前はこういう方式のレジあったぞ」

「マジですか」

 お会計は尊さんがカードでピッと払ってしまい、全員で「あざっす」とお礼を言った。





 ホテルの部屋に戻ったあと、本当は買ったばかりの商品も気になるけれど、まずカジノ見学のために着替える事にした。

「本当に正装じゃなくていいんですか?」

「世界中、北アメリカ、アジア、ヨーロッパとかで、それぞれドレスコードが違うんだ。オーストラリアではビジネスカジュアルと言われているが、前に涼と来た時は、もっとカジュアルな服装の人が大勢いたな。一応、俺は革靴にシャツ、チノパンで行くけど、朱里はワンピースとヒールのある靴ぐらいで大丈夫だと思う」

「そうなんですか」

 旅行に出る前、もしかしたらかしこまった場所で食事をするかもしれないからと、ドレスコードのある場所対応の服は持って来た。

 世の中、色んなワンピースはあれど、私はデザインを誤るとどすこいになってしまうので、思い切って襟ぐりの広いタイトワンピースを持って来た。

 黒地にホットピンクや白の花柄がついていて、セクシーながら華やかさがある。

 襟ぐりが広いと言っても谷間が出るほどじゃなく、胸元が詰まって見えない程度のデザインだ。

「あんまりこういう服、着る事はないと思ってたんですが」

「海外じゃあ、年齢問わず谷間出してるし、大人しいほうだと思うよ。似合う」

 尊さんは私が髪を纏め直している間、後ろに立ってネックレスの位置を直してくれていた。

 私は軽くメイク直しをし、少し濃い目のリップをつける。

「ん、世界一可愛い」

 尊さんは私を頭のてっぺんからつま先までチェックし、なんと、親指と人差し指をクロスさせて指ハートしてきた。

「どこからそんな情報仕入れるんですか!」

「こないだ、たまたま牧原さん達と出くわした時、教えてもらった」

「あざとい……! あざとミコ!」

「可愛いおっさんにならねぇと」

「急にそんな仕草されると、ギャップで心臓おかしくなりますよ! あ~、心臓に悪い! もう一回!」

「青汁のCMみたいだな」

 尊さんは笑いながら、今度は両手で指ハートしてきた。

 おまけにちょっと首を傾げて笑うので、あざとさMAXだ。

「くうぅう……っ! あざミコ!」

「はいはい、行くぞ」

 彼はケラケラ笑い、私の背中をトンと叩いた。

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