部長と私の秘め事
「しかし意外と儲けたなぁ……」
「今回は運が良かったね。恵ちゃん達がいたからかな」
「かもな。幸運のお猫様、ってね」
「恵ちゃん、ゲン担ぎに今度カジノ行く時も一緒にいて?」
「ぜってぇ嫌です」
「わあ、即答」
そのあと、私たちはキャッシャーへ行き、男性陣がチップを現金に換えるのを見守る。
「……彼らはさ、大金を動かすのに慣れてるかもしれないけど、私たちはホントこういうの駄目だよね」
疲弊しきった恵が言い、私は頷く。
「私、一時スマホゲームに嵌まってて、ちょっと課金しちゃった時期があったんだけど、その時は望むもののためにお金を使ってるからいいやって思えたけど、結局そのお金があったらコスメ買えるし、ちょっといいランチも食べられるし、勿体ないなって思ってやめたんだよね。……ガチャってギャンブルみたいなものって言うじゃない。人によっては意味のある散財でも、やっぱり勿体ない気持ちはあって。……その金額でも『あー、やっちゃった……』って思う庶民が、彼らみたいに何万円も思いきり良く賭けたりできないよね」
「本当にノミの心臓だから、きつい……。もう二度と来たくない」
「だね。社会見学はもういいや」
はぁー……、と大きな溜め息をついた時、二人が戻ってきた。
「お待たせ、帰るか」
「はい」
「恵ちゃん、尊と話してたんだけど、帰るまでにカジノで儲けたお金で思い出に残る物を買おうか」
「なんすか、それ」
恵が目を瞬かせると、涼さんはいい笑顔で言う。
「ちょうどホテルの近くにはハイブランドのショップもある事だし、手元には六十万近くのお金があるので、バッグとか服とか靴とかね」
「いや、いいっす」
「朱里は欲しいもんあるよな?」
……尊さんの圧が強い。
ここで何も要らないというのも悪いかと思い、私は「うーん、うーん」と考えてから必死に答えを絞り出す。
「……リップとか、香水とか?」
「せっかくだから、もっと大きいもんいけよ」
トンと背中を叩かれ、私は困って恵と顔を見合わせた。
「バッグ……いく?」
恵に尋ねると、彼女はフクロウかと思うぐらい首を傾げる。
「ブランドバッグを持って歩く自分が想像できない。通勤カバンは決まってるし、プライベートではスポーツ系のリュックが軽くて楽だし……」
確かに二人で遊ぶ時も、恵はあまり革製のバッグを持たない。
「指輪は先日買ったし、腕時計は?」
涼さんに言われ、私と恵は口を〝O〟の字に開いて大きく首を傾げた。
「なんか、アニメで山の精霊にそういう顔をした奴がいたな」
尊さんに突っ込まれたけれど、決してボケてる訳じゃない。私たちは真剣に戸惑っている。
「……というか、本当に二人とも無欲だよね。俺の知ってる女の子は……って言ったら失礼だけど、目を爛々と光らせて、次々に欲しい物を口にするよ」
涼さんはクスクスとおかしそうに笑い、「気をつけてね」と左右確認してから横断歩道を渡る。
「だって……、ねぇ。普通に暮らしている状態でも、欲しい物ありませんっていうほど満たされてるから、あんまり思いつかない。普段、物欲センサーが働くコスメ系なら思いつくけど、今回の買い物はそういう性質じゃなさそうだし」
「んだ。ここで『キャンプ用品欲しい』って言ったら、涼さんが泣くかも……っていうのは分かってる」
私たちの回答を聞き、尊さんと涼さんは顔を見合わせて笑う。
「せっかく一稼ぎしたお金ですし、尊さんたちのお小遣いにしたらどうですか?」
「お小遣いってなぁ……。というか堅い話をすると、〝金〟の形で帰国すると一時所得扱いされるし、それだったら免税店で買い物したほうが楽なんだよ」
「なるほど!」
そこまで考えていなかった私は、深く納得した。
「よし、恵。何を買ってもらうか考えよう。これは人助けだ」
「人助けなのか」
恵はそう言いつつも、今の説明を聞いて前向きな気持ちになったらしい。
「帰国までに間に合えばいいんですよね? 明日は予定があるし」
「ああ、考えておいてくれよ」
そのあと私たちは何がいいか考えながらホテルまで戻り、今日は寝る事にして涼恵ペアと別れた。
「今回は運が良かったね。恵ちゃん達がいたからかな」
「かもな。幸運のお猫様、ってね」
「恵ちゃん、ゲン担ぎに今度カジノ行く時も一緒にいて?」
「ぜってぇ嫌です」
「わあ、即答」
そのあと、私たちはキャッシャーへ行き、男性陣がチップを現金に換えるのを見守る。
「……彼らはさ、大金を動かすのに慣れてるかもしれないけど、私たちはホントこういうの駄目だよね」
疲弊しきった恵が言い、私は頷く。
「私、一時スマホゲームに嵌まってて、ちょっと課金しちゃった時期があったんだけど、その時は望むもののためにお金を使ってるからいいやって思えたけど、結局そのお金があったらコスメ買えるし、ちょっといいランチも食べられるし、勿体ないなって思ってやめたんだよね。……ガチャってギャンブルみたいなものって言うじゃない。人によっては意味のある散財でも、やっぱり勿体ない気持ちはあって。……その金額でも『あー、やっちゃった……』って思う庶民が、彼らみたいに何万円も思いきり良く賭けたりできないよね」
「本当にノミの心臓だから、きつい……。もう二度と来たくない」
「だね。社会見学はもういいや」
はぁー……、と大きな溜め息をついた時、二人が戻ってきた。
「お待たせ、帰るか」
「はい」
「恵ちゃん、尊と話してたんだけど、帰るまでにカジノで儲けたお金で思い出に残る物を買おうか」
「なんすか、それ」
恵が目を瞬かせると、涼さんはいい笑顔で言う。
「ちょうどホテルの近くにはハイブランドのショップもある事だし、手元には六十万近くのお金があるので、バッグとか服とか靴とかね」
「いや、いいっす」
「朱里は欲しいもんあるよな?」
……尊さんの圧が強い。
ここで何も要らないというのも悪いかと思い、私は「うーん、うーん」と考えてから必死に答えを絞り出す。
「……リップとか、香水とか?」
「せっかくだから、もっと大きいもんいけよ」
トンと背中を叩かれ、私は困って恵と顔を見合わせた。
「バッグ……いく?」
恵に尋ねると、彼女はフクロウかと思うぐらい首を傾げる。
「ブランドバッグを持って歩く自分が想像できない。通勤カバンは決まってるし、プライベートではスポーツ系のリュックが軽くて楽だし……」
確かに二人で遊ぶ時も、恵はあまり革製のバッグを持たない。
「指輪は先日買ったし、腕時計は?」
涼さんに言われ、私と恵は口を〝O〟の字に開いて大きく首を傾げた。
「なんか、アニメで山の精霊にそういう顔をした奴がいたな」
尊さんに突っ込まれたけれど、決してボケてる訳じゃない。私たちは真剣に戸惑っている。
「……というか、本当に二人とも無欲だよね。俺の知ってる女の子は……って言ったら失礼だけど、目を爛々と光らせて、次々に欲しい物を口にするよ」
涼さんはクスクスとおかしそうに笑い、「気をつけてね」と左右確認してから横断歩道を渡る。
「だって……、ねぇ。普通に暮らしている状態でも、欲しい物ありませんっていうほど満たされてるから、あんまり思いつかない。普段、物欲センサーが働くコスメ系なら思いつくけど、今回の買い物はそういう性質じゃなさそうだし」
「んだ。ここで『キャンプ用品欲しい』って言ったら、涼さんが泣くかも……っていうのは分かってる」
私たちの回答を聞き、尊さんと涼さんは顔を見合わせて笑う。
「せっかく一稼ぎしたお金ですし、尊さんたちのお小遣いにしたらどうですか?」
「お小遣いってなぁ……。というか堅い話をすると、〝金〟の形で帰国すると一時所得扱いされるし、それだったら免税店で買い物したほうが楽なんだよ」
「なるほど!」
そこまで考えていなかった私は、深く納得した。
「よし、恵。何を買ってもらうか考えよう。これは人助けだ」
「人助けなのか」
恵はそう言いつつも、今の説明を聞いて前向きな気持ちになったらしい。
「帰国までに間に合えばいいんですよね? 明日は予定があるし」
「ああ、考えておいてくれよ」
そのあと私たちは何がいいか考えながらホテルまで戻り、今日は寝る事にして涼恵ペアと別れた。