部長と私の秘め事
「いいよ。俺も怜香の事で、呪いの言葉を吐いて荒んでる姿を見せたくない。……お前ともっと前から会いたかったって思ってるけど、人生で一番荒んでる時期を見られずに済んだのは、良かったと思ってる」
「……尊さんって、理想の男性ですよね」
私は彼の頬を撫で、ちゅっとキスをする。
「そう思ってくれているなら嬉しい。朱里がいるから『理想の姿でありたい』って思えている。そりゃあ、結婚するし腹を割った関係でありたいけど、同性の友達にしか見せられない面まで、全部見せられるかって言ったら少し違うからな。俺にも守りたい面子はあるし、子供ができたらもっと理性的でありたいと願う」
「うん……。分かります。いつか母親になった時、ちゃんと尊敬してもらえるお母さんになりたい」
「八月下旬か、九月に女子会を予定してるんだろ? その時にでも発散して来いよ。いつも三ノ宮さん持ちだったら悪いから、次は俺が場を提供するから」
「ありがとうございます。でも、女子同士の問題ですからいいですよ。それに安くつくホテルなら、ラブホ女子会って言ったら、春日さんノリノリで参加しそう」
「ははっ、マジか」
尊さんは笑ったあと、顎クイして言った。
「女子会ならいいけど、男と行く時は俺とだけだぞ」
「う……、わ、分かってますよ。他の男性と行く訳ないじゃないですか」
「朱里は俺だけのもんだ」
大きな体に包み込まれるように抱き締められ、私はこの上ない幸せを感じる。
確かに尊さんには自分の汚い部分を見せられないけれど、こうやって一緒にいて安らげる存在は彼だけと言っていい。
一緒にいるだけで幸せな気持ちになって、フワフワして、「自分は世界一幸せな女の子だ」って思える彼氏に出会えた事は、この上ない誉れだ。
「落ち着いたか?」
頭を撫でられ、私は「はい」と頷く。
「上がるか?」
「……もうちょっとだけ、このまま」
私は尊さんの膝の上に座り、彼に抱きついたまま目を閉じる。
静かなバスルームの中、トクントクンと尊さんの鼓動が聞こえ、私の気持ちを落ち着かせていく。
日常に戻ったら一緒にお風呂に入っても、どこか次の予定を気にしてしまっているから、ケアンズ最終日の夜を贅沢に使おうと思った。
**
「恵ちゃーん、マッサージお兄さんが来ましたよ~」
「キモいからやめてください」
シャワーに入ったあと、私――、中村恵は、タオル片手にジリジリ近づいてくる涼さんに向かって恐い顔をし、威嚇する。
「まぁ、そう言わず。姫、飲み物をどうぞ」
涼さんはソファに座っていた私に、冷えた水を差しだし、自分はその足元に跪く。
「……姫って……。いつからホストになったんですか。いや、元からか」
「恵ちゃん専門のね!」
こういう扱いを受けるのに慣れたのか、涼さんはまったく堪えた様子がなく、バッチーンとウインクする。
諦めていると、彼はタオルで私の足を包んでマッサージしてきた。
「沢山遊んで疲れたでしょ。気持ち良くしてあげるからね~」
ラグの上に胡座をかいた涼さんの顔を見ていると、伏せられた睫毛がとても長いのが分かる。
「言い方が誤解を招きます」
「昇天させてあげる」
語尾にハートマークでもついていそうな言い方をされ、私は溜め息をつくと、今日撮った写真をスマホで確認し始めた。
「……いーんですか? 三日月グループの御曹司がパンピーの小娘にこんな事してて。ファンが知ったら卒倒しますし、私も刺されますよ。あいたぁっ!」
言った瞬間、足の側面をグリッと強めに押されて悲鳴を上げる。
「はい、ここ太白~。胃の不調と肝臓に効くよ~」
目を剥いてプルプルと打ち震えていると、彼はニヤリと笑った。
「くだらない事言ってるからだよ」
「でぃっ……、DV……!」
「いやだなぁ、恵ちゃんの体をメンテナンスしてあげてるんじゃない~」
そのあと、彼は程よい力加減で足のマッサージをしてくれるけれど、いつまたグリッとやられるか分からず、私はビクビクして身構える。
「あははっ、イカ耳になった猫みたい。かーわいー」
「ウウ……」
「恵ちゃんの中には、いまだに俺と釣り合わないかもとか、変な引け目があるんだろうけど、もう旅行にも行った仲だし、抱いてるし、家族にも紹介するつもりでいるし、諦めなよ。いつまでもパンピームーブかましてても、あんまり面白くないよ」
「……すみません……」
シュンとして謝ると、彼はマッサージを続けつつ言う。
「……尊さんって、理想の男性ですよね」
私は彼の頬を撫で、ちゅっとキスをする。
「そう思ってくれているなら嬉しい。朱里がいるから『理想の姿でありたい』って思えている。そりゃあ、結婚するし腹を割った関係でありたいけど、同性の友達にしか見せられない面まで、全部見せられるかって言ったら少し違うからな。俺にも守りたい面子はあるし、子供ができたらもっと理性的でありたいと願う」
「うん……。分かります。いつか母親になった時、ちゃんと尊敬してもらえるお母さんになりたい」
「八月下旬か、九月に女子会を予定してるんだろ? その時にでも発散して来いよ。いつも三ノ宮さん持ちだったら悪いから、次は俺が場を提供するから」
「ありがとうございます。でも、女子同士の問題ですからいいですよ。それに安くつくホテルなら、ラブホ女子会って言ったら、春日さんノリノリで参加しそう」
「ははっ、マジか」
尊さんは笑ったあと、顎クイして言った。
「女子会ならいいけど、男と行く時は俺とだけだぞ」
「う……、わ、分かってますよ。他の男性と行く訳ないじゃないですか」
「朱里は俺だけのもんだ」
大きな体に包み込まれるように抱き締められ、私はこの上ない幸せを感じる。
確かに尊さんには自分の汚い部分を見せられないけれど、こうやって一緒にいて安らげる存在は彼だけと言っていい。
一緒にいるだけで幸せな気持ちになって、フワフワして、「自分は世界一幸せな女の子だ」って思える彼氏に出会えた事は、この上ない誉れだ。
「落ち着いたか?」
頭を撫でられ、私は「はい」と頷く。
「上がるか?」
「……もうちょっとだけ、このまま」
私は尊さんの膝の上に座り、彼に抱きついたまま目を閉じる。
静かなバスルームの中、トクントクンと尊さんの鼓動が聞こえ、私の気持ちを落ち着かせていく。
日常に戻ったら一緒にお風呂に入っても、どこか次の予定を気にしてしまっているから、ケアンズ最終日の夜を贅沢に使おうと思った。
**
「恵ちゃーん、マッサージお兄さんが来ましたよ~」
「キモいからやめてください」
シャワーに入ったあと、私――、中村恵は、タオル片手にジリジリ近づいてくる涼さんに向かって恐い顔をし、威嚇する。
「まぁ、そう言わず。姫、飲み物をどうぞ」
涼さんはソファに座っていた私に、冷えた水を差しだし、自分はその足元に跪く。
「……姫って……。いつからホストになったんですか。いや、元からか」
「恵ちゃん専門のね!」
こういう扱いを受けるのに慣れたのか、涼さんはまったく堪えた様子がなく、バッチーンとウインクする。
諦めていると、彼はタオルで私の足を包んでマッサージしてきた。
「沢山遊んで疲れたでしょ。気持ち良くしてあげるからね~」
ラグの上に胡座をかいた涼さんの顔を見ていると、伏せられた睫毛がとても長いのが分かる。
「言い方が誤解を招きます」
「昇天させてあげる」
語尾にハートマークでもついていそうな言い方をされ、私は溜め息をつくと、今日撮った写真をスマホで確認し始めた。
「……いーんですか? 三日月グループの御曹司がパンピーの小娘にこんな事してて。ファンが知ったら卒倒しますし、私も刺されますよ。あいたぁっ!」
言った瞬間、足の側面をグリッと強めに押されて悲鳴を上げる。
「はい、ここ太白~。胃の不調と肝臓に効くよ~」
目を剥いてプルプルと打ち震えていると、彼はニヤリと笑った。
「くだらない事言ってるからだよ」
「でぃっ……、DV……!」
「いやだなぁ、恵ちゃんの体をメンテナンスしてあげてるんじゃない~」
そのあと、彼は程よい力加減で足のマッサージをしてくれるけれど、いつまたグリッとやられるか分からず、私はビクビクして身構える。
「あははっ、イカ耳になった猫みたい。かーわいー」
「ウウ……」
「恵ちゃんの中には、いまだに俺と釣り合わないかもとか、変な引け目があるんだろうけど、もう旅行にも行った仲だし、抱いてるし、家族にも紹介するつもりでいるし、諦めなよ。いつまでもパンピームーブかましてても、あんまり面白くないよ」
「……すみません……」
シュンとして謝ると、彼はマッサージを続けつつ言う。