部長と私の秘め事
「涼子も恵ちゃんに宥められたい……ッ! 全幅の信頼を寄せられたい……ッ!」
とうとう彼は、「わっ」と泣き真似を始めた。
「朱里ー、もうあとは大して用事ないし、お酒飲んじゃおうか」
「オッケー。美味しそうなカクテルがいいな」
私たちも慣れたもので、涼さんを無視してメニューを覗き込む。
「俺、ビールいっとくかな」
尊さんまで涼さんを無視したので、とうとう彼はグスグスと本格的な泣き真似をし始めた。
恵はそんな彼をチラッと見て溜め息をつき、少し大きな声で言う。
「あーあ、どうしよう。このシーフードコースと、オージーメニューと、最後に両方食べておきたいんだけど、シェアしてくれる人がいたらなぁ……」
わざとらしい助け船を聞き、涼さんはウルッとした目で恵を見る。
「……俺が立候補してもいい?」
それに恵はコクンと頷いた。
「来いよ」
「恵ちゃん男前……!」
よく分からないけれど、沢山食べられなくてシェアの助っ人を求めている恵のほうが、男前になってしまった。
私も尊さんと、シーフードとお肉をシェアする事にし、飲み物を頼んで乾杯した。
「あー! 幸せ! 甲殻類、ズッ友~!」
私と恵はお酒を飲みつつ、マッドクラブとロブスターを持って乾杯する。
「マジ、牡蠣もブラックタイガーもいける」
私たちは遠慮なくモシャモシャと旺盛な食欲を見せ、猫のオーナーたちは笑顔でお酒を飲み交わし、食いつきのいい私たちを写真や動画に収めている。
「朱里、思い残す事なくたんと食え。ほれ、クロコダイル」
「がぶーっ!」
私は差しだされたお肉をムシャアッと食べ、モグモグと口を動かす。
「恵ちゃん、エミューのワンタンもあるからね」
「うっす」
そしてメインの六百グラムのリブアイステーキは、お互いのパートナーと半分こした。
ちなみにリブアイとは、リブロースからカブリと呼ばれる霜降り部分、ゲタと呼ばれる肋骨周りのバラ肉を除いたお肉だ。
添え物のポテトやジャスミンライスなどもペロッと食べたあと、シメはアイスクリームのフルーツ添えにコーヒーをいただいた。
空港にはフライト時間の二時間前に着いているのが望ましいとして、私たちは残る一時間をスーパーマーケットや近くのお店で過ごす。
残る一時間は空港で免税店やお土産を買う時間に充てた。
ハイブランドショップでの買い物は予算の六十ドル近くを大幅に超えてしまったので、カードでの精算となった。
だから現金がまるっと残っているので、お土産や免税店でコスメや香水を買うのに、使わせてもらう事になった。
「よし、行ってこい。好きなだけ買え」
デパコスがズラリと並んでいるお店の前で、尊さんが私の背中をトンと叩く。
「ありがとうございます……っ! 一生恩に着ます!」
「着なくていい」
冷静に突っ込みを入れられたあと、私は恵を伴ってキラキラコスメが沢山ある店内に入っていった。
俺――、篠宮尊は、朱里たちが見える場所に立って、彼女たちを見守る。
「なんだか小さい子のお使いを見てるみたいで、ハラハラするな~」
隣にいる涼が言い、俺は苦笑いする。
「カタコト英語だからな。でも朱里は気合いの入ったボディランゲージするから、大体伝わると思う。まぁ、買う物が化粧品なら、見せてもらって『これください』で大丈夫なんじゃないか?」
「尊とあちこち行った時も楽しかったけど、恋人と一緒だと別の楽しみ方になるね」
「まぁな。……とりあえず〝安全に寝られればいい〟だけじゃ済まないからな」
「あははっ、確かに。恵ちゃんはいまだに何かと慣れてなさそうで、おっかなびっくりだけど、その内リラックスして楽しんでくれるようになったらいいな」
「中村さんは、本当に警戒心の強い猫みたいだよな」
「朱里ちゃんは好奇心旺盛な猫タイプね」
俺たちはそう言い合い、クスッと笑う。
「まー……、こうやって好きな子の事で笑えるようになったって、俺たちって随分幸せになったよな」
涼に言われ、俺は「まぁな」と笑う。
とうとう彼は、「わっ」と泣き真似を始めた。
「朱里ー、もうあとは大して用事ないし、お酒飲んじゃおうか」
「オッケー。美味しそうなカクテルがいいな」
私たちも慣れたもので、涼さんを無視してメニューを覗き込む。
「俺、ビールいっとくかな」
尊さんまで涼さんを無視したので、とうとう彼はグスグスと本格的な泣き真似をし始めた。
恵はそんな彼をチラッと見て溜め息をつき、少し大きな声で言う。
「あーあ、どうしよう。このシーフードコースと、オージーメニューと、最後に両方食べておきたいんだけど、シェアしてくれる人がいたらなぁ……」
わざとらしい助け船を聞き、涼さんはウルッとした目で恵を見る。
「……俺が立候補してもいい?」
それに恵はコクンと頷いた。
「来いよ」
「恵ちゃん男前……!」
よく分からないけれど、沢山食べられなくてシェアの助っ人を求めている恵のほうが、男前になってしまった。
私も尊さんと、シーフードとお肉をシェアする事にし、飲み物を頼んで乾杯した。
「あー! 幸せ! 甲殻類、ズッ友~!」
私と恵はお酒を飲みつつ、マッドクラブとロブスターを持って乾杯する。
「マジ、牡蠣もブラックタイガーもいける」
私たちは遠慮なくモシャモシャと旺盛な食欲を見せ、猫のオーナーたちは笑顔でお酒を飲み交わし、食いつきのいい私たちを写真や動画に収めている。
「朱里、思い残す事なくたんと食え。ほれ、クロコダイル」
「がぶーっ!」
私は差しだされたお肉をムシャアッと食べ、モグモグと口を動かす。
「恵ちゃん、エミューのワンタンもあるからね」
「うっす」
そしてメインの六百グラムのリブアイステーキは、お互いのパートナーと半分こした。
ちなみにリブアイとは、リブロースからカブリと呼ばれる霜降り部分、ゲタと呼ばれる肋骨周りのバラ肉を除いたお肉だ。
添え物のポテトやジャスミンライスなどもペロッと食べたあと、シメはアイスクリームのフルーツ添えにコーヒーをいただいた。
空港にはフライト時間の二時間前に着いているのが望ましいとして、私たちは残る一時間をスーパーマーケットや近くのお店で過ごす。
残る一時間は空港で免税店やお土産を買う時間に充てた。
ハイブランドショップでの買い物は予算の六十ドル近くを大幅に超えてしまったので、カードでの精算となった。
だから現金がまるっと残っているので、お土産や免税店でコスメや香水を買うのに、使わせてもらう事になった。
「よし、行ってこい。好きなだけ買え」
デパコスがズラリと並んでいるお店の前で、尊さんが私の背中をトンと叩く。
「ありがとうございます……っ! 一生恩に着ます!」
「着なくていい」
冷静に突っ込みを入れられたあと、私は恵を伴ってキラキラコスメが沢山ある店内に入っていった。
俺――、篠宮尊は、朱里たちが見える場所に立って、彼女たちを見守る。
「なんだか小さい子のお使いを見てるみたいで、ハラハラするな~」
隣にいる涼が言い、俺は苦笑いする。
「カタコト英語だからな。でも朱里は気合いの入ったボディランゲージするから、大体伝わると思う。まぁ、買う物が化粧品なら、見せてもらって『これください』で大丈夫なんじゃないか?」
「尊とあちこち行った時も楽しかったけど、恋人と一緒だと別の楽しみ方になるね」
「まぁな。……とりあえず〝安全に寝られればいい〟だけじゃ済まないからな」
「あははっ、確かに。恵ちゃんはいまだに何かと慣れてなさそうで、おっかなびっくりだけど、その内リラックスして楽しんでくれるようになったらいいな」
「中村さんは、本当に警戒心の強い猫みたいだよな」
「朱里ちゃんは好奇心旺盛な猫タイプね」
俺たちはそう言い合い、クスッと笑う。
「まー……、こうやって好きな子の事で笑えるようになったって、俺たちって随分幸せになったよな」
涼に言われ、俺は「まぁな」と笑う。