部長と私の秘め事
 翌朝、朝食レストランで恵と涼さんに会った私は、「おはようございます」とブンブンと手を振る。

 今日は移動だけと思っているのはみんな同じで、私はグレーのスウェット地ワンピース、恵は白Tの上にレモンイエローのパーカーを羽織り、ライトグレーのワイドスウェットパンツを穿いていた。

 男性陣も似たような感じだけど、ラフな格好でも体が格好いいからモデルみたいに様になっている。

 涼さんは恵と合わせてなのか、ワイドパンツスタイルで、尊さんはタイトなデザインだけれど、筋肉のある脚の形が格好いいので、何を着てもスーパーモデルミコだ。

 朝食ビュッフェはいつもの感じで、ソーセージやベーコン、ハムやオムレツをメインに、サラダ、甘くないパンで攻めていく。

「免税店、開いてる所は六時からやってるはずだから、二人とも、最後に思い残す事なく買い物するんだよ」

 食後、涼さんに言われた私と恵は、思わず顔を見合わせる。

 昨日も沢山コスメや香水を買わせてもらったし、お土産のお菓子やコーヒー、紅茶なども買った。

 それでも使い切れないお金があるので、なんだかもう【ミッション! お金を使い切ろう!】みたいなゲームになりつつある。

 出資者である彼らは特に自分の買い物はせず、自由に使っていいと言ってくれている。

 寄付をしてもまったく構わないと思っているんだろうし、寄付はいい事だけど、ある程度使ってしまわないと勿体ない庶民根性がある。

「……頑張ります」

「うっす……」

 私たちが深刻な顔をして頷いたのを見て、涼さんはケラケラと笑う。

「いいね~。自由に買い物できるのに、ここまで覇気のない女の子も珍しい」

「寄付に回っても俺らは全然構わないから、無理に買い物しなくてもいいからな?」

「はい……」

 頷きつつも、私は母や美奈歩にも、もう一つコスメを買う事を決意する。

 春日さんやエミリさんは彼女たちの趣味があるだろうし、無難な色のリップを選ぶのでせいぜいだ。

 その前に彼女たちなら、十分にコスメのコレクションがあるだろうけど。

 朝食を終えた私たちは部屋に戻り、歯磨きやらをし終えたあとにチェックアウトし、空港へ向かった。



**



 キングスフォード・スミス国際空港は、第一から第三ターミナルまであり、第一ターミナルが国際線、第二、第三が国内線だ。

 第一ターミナルに向かった私たちは、とるべき手続きのあと、再び免税店巡りをする。

 沢山買い物をしていて大丈夫なのかと心配になる所だけど、九百オーストラリアドルまでは免税が効くそうだ。

 九百オーストラリアドルって幾ら? という事になるけれど、ざっくり十万円。

 そう、私たちのお買い物は、すでに税金を支払うレベルになっているのである。

 カジノに行った翌朝に尊さんと涼さんから聞かされ、私と恵は『勝っちゃうから……!』と声を合わせて悲鳴を上げた。

 けれど金銭感覚のネジが吹っ飛んだ二人が、海外旅行に行ってお買い物十万円で済む訳がなく、最初から税金を支払うつもりでいたそうだ。

 変な気遣いというか、私と恵は免税の枠内で買い物をした事にして、税金を支払うのは男性陣の役目だから、気にしなくていいと言われている。

 だからコスメやら沢山買ったのも、金額を計算して彼らにレシートを渡している。

 おんぶに抱っこで申し訳ないけれど、高額な買い物はカードでしてしまい、あとはカジノで勝ったお金を消費しなければならないので、半分ヤケクソだ。

「うう……、いつもお金使わせてしまってるけど、日本でも税金払ってるけど、今は余計に申し訳ない気がする」

 恵はばらまき用のチョコレートをポイポイとカゴに入れ、うめく。

「ホントだよね~。……っていうか、恵は友達多いからいいよね。私、友達少ないから買ってく人が少なくて……」

「……まぁ、本当の意味での友達って言えるか、怪しいけどね。涼さんを彼氏として紹介しても大丈夫なのって、朱里ぐらいしかいない気がする」

「そうなの?」

 私の中で恵は〝みんなの人気者〟のイメージが強く、このサラッとした適度な塩対応が人気の秘訣であるように思える。

 みんな〝男勝りで格好いい恵〟を好いているけれど、彼女から見るとそうではなさそうだ。

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