部長と私の秘め事
「友達が多いのも、まぁまぁ面倒だよ。休日潰れるし。……最近はみんな大人になったから、声が掛かる頻度は下がったけど、定期的に〝いつメン〟の飲み会みたいなのはあるし、そこで聞かされる愚痴にも飽きてきた」

「……いいな。私も恵と〝いつメン〟の飲み会やりたい」

「そこ、寂しそうに言わない。朱里の事は最優先してるでしょ。つか、春日さんやエミリさんとはお馴染みになってきたし、彼女たちは〝いつメン〟じゃないの?」

「……そ、そうだね」

 私は自分にもちゃんと女子会を開く友達がいると認識し、「ふひひっ」と笑う。

「学生時から社会人になるまで、色んな人たちを見てきたけど、一緒にいて負担にならない、リスペクトできる人って本当に限られてるよ。……嫌な人たちって訳でもないけど、〝いつメン〟でも水面下でマウントとったり、幸せ自慢したり、愚痴を聞いて『可哀想~』って同情しつつも、興味津々なんだよね。誰かの噂話をして喜んだりとか。……そういう人といるのは疲れる。だから飲み会に誘われても、一次会で顔を見せて終わり」

「……ふぅん……」

 私は小さく頷きつつ、恵の手を握る。

「そこ、こっそり喜ばない。最初から朱里は特別だって言ってるでしょ? 誕生日の時に彼氏みたいにデートプランを考えて、全力でお祝いするの朱里だけなんだから」

「へへへ」

 喜んでイチャイチャしていると、ヌッ……と背後に誰かが立った。

「い~なぁあああぁああぁ……。涼子も入れてえええぇえええぇえぇぇ……」

「悪霊退散!」

 涼さんだと分かった瞬間、恵はベチン! と彼の胸板を平手で叩く。

「百合に挟まる男が一番嫌われるって、知らんのか」

 尊さんに言われ、涼さんはエアおさげの先端を持って「だって……」とメソメソする。

「涼子、実家太いしお財布の紐緩いし、周りから認められる美人だけど、恵ちゃんの親友枠に入れてくれない?」

 胸に手を当てた涼さんは、シパシパと瞬きをして睫毛の長さを見せつけつつ、恵を見つめる。

「…………何言ってるんですか、あんたは」

 恵はふかーい溜め息をついたあと、「行こ」と私の腕を組む。

「そんな態度とってると、恵ちゃんの前でセーラー服着るよ!?」

「どういう脅しですか! キモいからやめてください!」

「恵ちゃんと百合がしたい……!」

 わっ、と泣き真似をする涼さんを見て、尊さんも呆れ顔だ。

「……お前、どんどんこじらせてってるな……」

「不思議と今は、篠宮さんの事が物凄いまともに見えます」

「おのれ明智ミコヒデ、お前が謀反者か……!」

 くわっと振り返った涼さんを見て、尊さんは「マジで余裕ねーな」と突っ込んだ。

「涼子さんはミトコと百合しないんですか?」

 私が救済措置を出すと、涼さんは物凄い嫌な顔をする。

「……百合と薔薇の交配種って、物凄いモンスターになりそうじゃない?」

「どちらも匂いが強いでしょう」

 涼さんの言葉を聞いて恵が言い、彼はガックリと項垂れる。

「謎かけじゃないんだから……」

「朱里、他にも欲しい物があるなら、どんどんいっとけ。アイシャドウも、デート用とオフィス用と、何パターンかいっとけ」

 尊さんはコスメの棚を見て言う。

「もう沢山あるんですよう」

「備えあれば憂いなしだろ」

「コスメがありすぎて、あまり緊急事態にはならないんですが……」

「恵ちゃん、コアラの毛皮のバッグいっとく?」

「興味ないです。涼さんの腰巻きでも探したらどうですか? ほら、マオリ族の……ハカ? あれやったら似合いそう」

 私はニュージーランドの選手がラグビー前にやる舞踊を思い出し、ぶふっと噴き出す。

「恵ちゃんは俺と戦いたいのかな?」

 涼さんに言われ、私と恵は顔を見合わせたあと、カゴを置いて両手を上げ、べーと舌を出す。

「ちょっと~! 尊! うちの恋人が威嚇するレッサーパンダみたいで可愛いんだけど!」

 まさかの全力のハカ(真似)が、レッサーパンダになってしまった。

 尊さんは私の両手を恋人繋ぎで握り、手を下ろさせつつ体を密着させてくる。

「……で? 威嚇したあとは? 可愛い舌見せつけて」

 そう言われると、何だか急にエッチな事をしてしまった気持ちになった。

「かっ、考えすぎですよ! ミトコのエッチ!」

 プンと横を向いてカゴを持った私は、恵に「行こ」と促した。

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