部長と私の秘め事

南紀白浜へ

 今回同行するメンバーは、将馬さん、百合さんご夫婦の他に、ちえりさん、大地さん、小牧さん、弥生さんだ。

 大地さんも本来は仕事があって忙しいけど、『女所帯の中に尊が一人だけは可哀想だ』と、夏休みをずらして同行してくれるらしい。

 私たちはJALのカウンター前で待ち合わせをしていて、そちらへ向かって歩いていると、久しぶりと思える面々の姿があった。

「朱里さーん!」

 私たちに気づいてブンブンと手を振ったのは、小牧さんだ。

 以前に〝こま希〟で会った時は素敵な着物を着ていたけれど、今日はロングヘアを纏め髪にし、レモンイエローのワンピースを着ている。

 そのパッと目を引く色が、明るい彼女にぴったりだと思った。

「お久しぶりです!」

 私はタタッと小走りになり、彼女たちのもとへ駆けつける。

 今日の私のコーデは、黒いノースリーブに鮮やかなバイオレットのフレアスカート、上にグレージュのカーディガン、黒いスニーカーだ。

 飛行機に乗るので髪は二つ縛りにしている。

 尊さんは普段とあまり変わらず、白Tにグレンチェックのテーパードパンツ、黒いスニーカーだ。

「朱里さん、こんにちは。変わりない?」

 将馬さんと百合さんは近くのベンチに座っていて、私たちを見て歩み寄ってくる。

 百合さんはライトグレーのトップスにライムグリーンのパンツを穿き、白いレースのカーディガンを羽織っている。

「百合さん、お久しぶりです! うわぁ、綺麗な色の服を着こなされてますね。素敵!」

 手放しに褒めると、彼女は照れくさそうに微笑む。

「歳と共に否が応でも地味になっていくから、色々工夫しているわ」

 そう言った彼女は、後ろから歩いてきた尊さんに目を向けて笑いかける。

「尊、久しぶりね。熱中症になっていない?」

 若干、彼に話しかける百合さんの表情や声にぎこちなさを感じたけれど、彼女も努めて親しくなろうと努力しているのが分かった。

「お久しぶりです。俺は元気にやれています。……ゆ、…………、お、…………お祖母ちゃんも体調を崩していませんか?」

〝お祖母ちゃん〟と言う時、尊さんは口ごもり、少し赤面する。

(頑張れ!)

 私は心の中でエールを送る。

「平気よ。気遣いをありがとう。先日、オーストラリアのお土産が届いたわ。わざわざありがとうね」

「いいえ、少しばかりで申し訳ないですが」

 そんな祖母と孫のやり取りを、周りの人たちはニコニコ笑顔で見守っている。

「さ、チェックインしましょうか」

 ちえりさんに言われ、私たちは順番に荷物を預ける。

 そのあと保安を通ってカフェで時間潰しをしたあと、搭乗した。





 南紀白浜空港行きの飛行機は、少し離れた場所にあるのでバスに乗っての移動だ。

 ケアンズに行った時のビジネスクラスは素晴らしかったけど、クラスJのシートでも十分だ。

 クラスJは飛行機の前方にあり、前を向いて左側に二席、通路を挟んで右側に三席の配列で、合計二十席ある。

 私と尊さんは左側に隣同士で座り、右側に将馬さんと百合さんとちえりさん、小牧さんと弥生さんと大地さんという組み合わせになった。

 時間になってエンジンがかかり、私は何度乗ってもドキドキする飛行機に胸をときめかせる。

 やがて滑走路まで移動した飛行機は、キュイーン……とプロペラの回転数を速め、進んでいく。

(きたきたきたー!)

 グンッと後ろ向きにGがかかったかと思うと、飛行機はグングンと上昇していく。

(あばよ、東京)

 私はしばらく眼下の景色を見ていたけれど、やがて高度が安定したあとミステリー小説の文庫本を読み始めた。



**



 一時間少しのフライトで南紀白浜空港に着いた私は、「んーっ!」と伸びをする。

 空港は数年前に、愛称が〝熊野白浜リゾート空港〟と決まったそうだ。

 いわゆる、中部国際空港をセントレアと呼ぶあれだ。

 空港は割とこぢんまりとしていて、二階に出発ロビーと待合、売店とレストランがあり、一階にあるカウンターはJALのみ。

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