部長と私の秘め事
結局、お会計は残る四人のテーブルは大地さんが払い、私たちのテーブルは尊さんが払ってくれた。
その後、待ってもらっていたハイヤーに戻り、観光地でもある千畳敷へ行った。
「わー! 海だー!」
「朱里、足元気をつけろよ」
私は目の前に広がる太平洋を見てテンションを上げ、尊さんに注意される。
千畳敷は名前の通り、千枚の畳が積み重なったような崖だ。
意外とお土産屋さんなどもあって賑わっていて、観光客が大勢いる。
説明書きの看板によると、千八百万年から千五百万年にできた地層が、波に侵食されてこのような複雑な地形になったとの事だ。
「私たちはここで待ってるわ」
百合さんと将馬さんに付き添ったちえりさんが言い、私は「はい」と頷く。
確かにお元気そうに見えても、一つ間違えたら怪我をするかもしれない場所を、あまり歩こうとは思わないんだろう。
「おとととと……」
私は緩やかな傾斜になっている岩場を下り、その下の岩場をゆっくり下りていく。
イメージで言えば、棚田みたいな感じと言えばいいんだろうか。
段差の低く、それでいて面積の広い岩が重なっているので、思っているより歩きやすい。
「尊さん、尊さん、はいっ、自撮り棒~!」
私は某便利グッズの猫型ロボットの声真似をし、自撮り棒にスマホをつける。
「ケアンズの海も綺麗でしたけど、日本の海もいいですよね」
「だな」
私たちはそう言い合い、千畳敷と海を背景に記念撮影する。
景色を堪能したあと、車で五分の距離にある三段壁洞窟へ行った。
入場料は大人千五百円で、京都で神社仏閣を拝観するのと似た値段だ。
三段崖洞窟は、エレベーターに乗って断崖絶壁の中に潜り、洞窟の中から海を見る観光地だ。
尊さんが潮の満ち引きを示す、タイドグラフというのをチェックしてくれたけれど、どうやらこの日は十六時半ぐらいが満潮らしく、十四時過ぎの今はそこそこ潮位が上がっている。
案内図を見ると、エレベーターで下に下りて、洞窟の中をグルッと一周できるコースがある。
私たちはザッパーンと波が打ち寄せる様子を動画に収め、神秘的な洞窟内も写真に撮る。
中には牟婁大辯才天を祭っている場所もあり、沢山の神様の像がズラリと並んでいる様は圧巻だ。
どうやら「いかなる願いも叶える」と言われているようで、私は念入りに尊さんといつまでも幸せラブラブできるよう祈った。
勿論、周りの人の健康や長生きなども。
十五分ほどで見終わったあとは、車に戻り、海岸線のドライブを楽しみながら今夜の宿へ向かった。
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「うへぇ~!」
ホテルの前でハイヤーから降りた私は、近くに停まっている車を見てそんな声を上げてしまった。
馴染みがある訳じゃないけれど、涼さんの車を見てエンブレムを覚えてしまった。
高級車ロールスロイスがホテルの前に停まっていて、どうやら空港まで送迎するための車らしい。
ホテル名は某〝都会のハンター〟を呼び出すための合い言葉みたいな名前で、自動ドアにもでかでかとロゴが描かれてある。
ウィーンと開いた中に入ると、今度はロビー(?)に真っ赤なフェラーリが展示されてあった。
どうやらホテル名も車に関係しているようで、ずいぶんな車好きのオーナーのようだ。
温泉と聞いていたので、和風な建物を想像していたけれど、コンクリート打ちっぱなしの内装はかなりスタイリッシュだ。
「大地が選んだっていうから、どんなお宿かと思ったら、現代的ねぇ~」
ちえりさんは周囲を見て言う。
「お兄ちゃん、あれでいて車好きだからねぇ~」
小牧さんが言い、屋内はクーラーが効いているけれど、パタパタと手で顔を扇ぐ。
その後、部屋に案内されたけれど、廊下もかなりシンプルで、コンクリート打ちっぱなしのシンプルな廊下に、組み木細工の引き戸がある。
こうやって見ると大きな平屋建ての建物に部屋があるように見えるけれど、実際はそれぞれの棟は独立しているらしい。
さっきのフェラーリの向かいにフロントのカウンターがあったけれど、私たちは構わず部屋に案内された。
皆さんと一旦お別れして部屋に入ると、いきなりダイニングテーブルがあった。
(珍しい作りだな)
そう思っていると、そこでウェルカムドリンクが出され、チェックインの手続きをとるようになっていた。
横手はお手洗いと洗面、内風呂になっていて、なんとアメニティはポーラだった。
チェックインが終わっていざお部屋に入り、私はテンションをぶち上げて声を上げてしまった。
「すっごーい!」