部長と私の秘め事
広々とした部屋の向こうに、青い海が見える。
室内には一段上がった所が畳敷きになっていて、ゆったりサイズのお布団が二組敷いてある。
その前には半円状のソファとテーブルが向き合い、壁には液晶テレビがある。
角度的にベッドに寝ながらテレビを見られるのがいい。
ベッドの頭側の壁には、大きな正方形の絵画が掛かっているけれど、モダンアートというか、ブラウンの石畳を表したような物や、アイボリーの小さな正方形の大理石を敷き詰めたような不思議なデザインだ。
けれどコンクリートが剥き出しになっている部屋なので、そういう絵がマッチしている。
部屋は八十四平米、言ってしまえば四十六畳分あり、本当に広い。
ミコハウスもびっくりだ。
出入り口から見て、左手のデッキは露天風呂になっていて、なんとリモコンでガラス戸がウィーンと下がり、綺麗な海を見ながら温泉に浸かれる。
右手側のデッキにはテーブルセットがあって、尊さんいわく「車好きのオーナーなら、このデザインはなんだかランボルギーニっぽいな」との事だ。
確かにちょっと、鋭角なデザインだ。
そのさらに右手に、数段下りる階段があり、広々としたウッドデッキにはモダンなデザインの、赤い外用ソファセットがある。
加えてウッドデッキは断崖絶壁の上にあり、そのギリギリに赤いハンギングチェアがあるので、テンションぶち上がりである。
「すごーい! 景色独り占め! 海独り占め! 贅沢ー!」
ピョンピョン跳ねて喜んだ私は、尊さんにスマホを渡してハンギングチェアに座り、「撮って~!」とねだる。
「はいよ。三、二、一……」
興奮のあまり、私はそのあともデッキの手すりにもたれ掛かったり、ソファに座ったりなど、ポーズを変えて写真を撮ってもらった。
そのあと、勿論尊さんとツーショットで記念撮影する。
中に入って一旦落ち着いた私は、ウェルカムドリンクをチュルーと飲む。
「てっきり大浴場で女性陣で裸の付き合い……とか思ってましたけど、ここは徹底して一組のお客さんのプライベートを守ってくれる感じですね」
「……いや、大地の場合はそれよりも車好きオーナーのほうで選んだな……」
尊さんがボソッと言うので、私はクスクス笑う。
「ま、今日は移動で疲れたし、ゆっくりさせてもらいましょうか。個室の露天風呂に入りながら、海を見られるなんて最高!」
「確かに、個室露天風呂と海の組み合わせはいいな。この辺りの宿、インプットしとくよ」
「ピピピ」
私は尊さんのこめかみに指先を当て、メモリーに記憶させる。
「涼さんに教えたら、喜びそうですね。恵とのデートコースに」
「あー、確かにカップル向けかもな。特にあの海を見ながらの個室露天風呂は最高だと思うし」
頷いたあと、尊さんは「よし」と立ちあがり、スマホを起ち上げる。
そして動画でグルッと室内の様子を撮影し、露天風呂やデッキなども余す事なく収めたあと、涼さんに送信したらしかった。
「俺もだけど、あいつも結構忙しいから、全国津々浦々、いいホテルがあるのは分かっていても、自由に休んで行動できる時間があるか、って話だけどな」
「でも、妄想が捗るんじゃないですか?」
「だな。今のあいつは中村さんを見ているだけでも、一から百を生み出すぐらいの妄想ができそうだから」
「『大好き!』っていうのが伝わっていいですよね」
私は親友が愛されているのが嬉しくて、ニコニコする。
と、尊さんは私の顎をクイッとして自分のほうを向かせ、尋ねてくる。
「俺の『大好き』も伝わってる?」
急にそういうモードになり、おまけにいつものお色気ムンムンの、お迫りモードの尊さんじゃないので、何だかドキッとしてしまった。
素の表情で見つめてくる彼の前で、私はカーッと赤面していく。
「……しゅ、しゅきですよ?」
自分でもテンパったあまり、いつもの「しゅき」なのか、口が回ってないだけなのか分からない。
すると尊さんは無言で自分の唇を、トントンと指先で示す。
(キ、キスをすれと仰るのか!)
私は照れたまま上目遣いに尊さんを見て、ジリジリと座る場所をずらして彼に密着する。
そしてギューッと抱き締めると、目を閉じたキス待ち顔の尊さんを見つめてムラムラとし、そっと彼に口づけた。
彼は私を膝の上にのせ、顔の角度を変えて深くキスしてくる。