部長と私の秘め事
「バミリ大事よ~。コンサートでも前半はオケのコンサートだけど、後半でピアノ協奏曲が入ると、途中からグランドピアノを移動させないとならないじゃない。その時にリハーサルと同じ位置で椅子がセットされてないと、本当に収まりが悪くて弾けたもんじゃないの」
いわずもがな、バミリとは舞台などで出演者や機材などの立ち位置、設置場所を間違えないように、床にテープを貼っておく奴を言う。
……まぁ、それと一緒にしちゃうのはちょっと罰当たりだけど。
左手にある豊受大神宮は、鳥居をくぐって排所で参拝はできるけれど、普通の神社と同じように御正宮を直接拝む事はできない。
その代わり〝せんぐう館〟に実物大のレプリカがあるとか。
「あー……、細かい事なんだが……」
尊さんはそこまで言い、腕組みをして少し黙る。
「なんですか? ミコペディア頼りにしてるんですから、全部言ってくださいよ」
ツンツンとつつくと、彼は溜め息をついて言う。
「まぁ、金運上昇とか商売繁盛とか、そういうのは別の所でやったほうがベターなのかな、と。神社も適材適所というか。……伊勢神宮は天皇陛下が参拝されて、国民の幸せを祈ってくださる場所だ。そこで俺らが私利私欲に満ちた願掛けをするか……、という話で。……んまー、細かい事を言って悪いんだが」
「いえいえ、教えてもらえて嬉しいです。確かにそうですよね。じゃあ日頃の感謝と、世界平和を祈っておきます」
「ははっ、俺もそうしとく。……で、参拝のおさらいな。まず、揖。最初の軽いお辞儀。そのあと賽銭を入れて二拝。拝は九十度ぐらいの深いお辞儀だ。それで祈願。そのあと二拝二拍手一拝。……で、また揖。それで正中……御本殿の真ん中側の足を先に引いて退場」
「わぁー……、ちょっとリハーサルします」
私は尊さんにレクチャーを受け、お参りのリハーサルをする。
その様子を見守ってくれていた百合さん、ちえりさん達と共に、御正宮にお参りをした。
鳥居の中は写真撮影禁止で、緊張しながらのお参りだったけれど、なんとかミッションクリアした。
そのあと一旦引き返し、亀石を横目に池を渡ると、右手に大土乃御祖神を祀った別宮・土宮がある。
こちらは市街地の西にある、宮川の氾濫に困った昔の人々が祀った神様だ。
左手にある別宮・風宮は、級長津彦命、級長戸辺命を祀っている。
級長津彦命は伊弉諾尊と伊弉冉尊の間に生まれた風の神らしい。
そして級長戸辺命と同一の神とされたり、兄弟だったり、夫婦とも言われたり、色々だ。
こうやって二柱を合祀している神社も多くあるらしい。
名前の〝し〟は〝風〟、〝な〟は〝長い〟を意味していて、歴史で習った元寇を退けた神風を吹かせた神様だとか。
他にも航海の安全を守る神様、読み方から風邪を治す神様としても祀られている。
さらに奥には下御井神社がある。
こちらはお宮が木製の柵に囲まれていて、下御井鎮守神を祀ってある。
周囲はかなり木々が生い茂っていて、ちょっと恐い雰囲気がある。
今は大人数で回ってるから平気だけど、一人できたらビビったかもしれない。
囲いの中にある小さなお宮に見えるのは、井戸を覆う小屋みたいなものらしい。
下御井鎮守神は、伊勢神宮の神様が飲む御料水の守護神だそうだ。
外宮には上御井神社もあるけれど、そちらは一般に参拝する事はできない。
同じ井戸の神様だけど、〝上〟と〝下〟は文字通り上下関係にある。
上御井神社では、元旦に初めて組む、一年の邪気を払うと言われる若水(わかみず)を汲んでいる。
毎朝、浄衣を着た神職の方がお水を汲んで、神様にお供えしているらしい。
他にも伊勢神宮で醸造するお酒に使う水も、上御井の物を使っているとか。
メインで使っているのは〝上〟で、私たちが今いる〝下〟は〝上〟が何らかの理由で使えない時のサブ扱いだ。
「高天原――、まぁ、ざっくりと神様のいる所、にある井戸を忍穂井と言って、その水が丹後国比治の真名井――一説では、『丹後国風土記』にある奈具神社、または籠神社の奥宮にある、眞名井神社……を経て、豊受大御神が伊勢の外宮に住まいを移した時、この井戸にも高天原の水が宿った……とされてる。あとは、天岩戸と繋がってる説とか、天照大神の孫の瓊瓊杵尊が掘った説とか、色々な」
「ふーん……」
私は腕組みをして考えたあと、シュパッと挙手する。
いわずもがな、バミリとは舞台などで出演者や機材などの立ち位置、設置場所を間違えないように、床にテープを貼っておく奴を言う。
……まぁ、それと一緒にしちゃうのはちょっと罰当たりだけど。
左手にある豊受大神宮は、鳥居をくぐって排所で参拝はできるけれど、普通の神社と同じように御正宮を直接拝む事はできない。
その代わり〝せんぐう館〟に実物大のレプリカがあるとか。
「あー……、細かい事なんだが……」
尊さんはそこまで言い、腕組みをして少し黙る。
「なんですか? ミコペディア頼りにしてるんですから、全部言ってくださいよ」
ツンツンとつつくと、彼は溜め息をついて言う。
「まぁ、金運上昇とか商売繁盛とか、そういうのは別の所でやったほうがベターなのかな、と。神社も適材適所というか。……伊勢神宮は天皇陛下が参拝されて、国民の幸せを祈ってくださる場所だ。そこで俺らが私利私欲に満ちた願掛けをするか……、という話で。……んまー、細かい事を言って悪いんだが」
「いえいえ、教えてもらえて嬉しいです。確かにそうですよね。じゃあ日頃の感謝と、世界平和を祈っておきます」
「ははっ、俺もそうしとく。……で、参拝のおさらいな。まず、揖。最初の軽いお辞儀。そのあと賽銭を入れて二拝。拝は九十度ぐらいの深いお辞儀だ。それで祈願。そのあと二拝二拍手一拝。……で、また揖。それで正中……御本殿の真ん中側の足を先に引いて退場」
「わぁー……、ちょっとリハーサルします」
私は尊さんにレクチャーを受け、お参りのリハーサルをする。
その様子を見守ってくれていた百合さん、ちえりさん達と共に、御正宮にお参りをした。
鳥居の中は写真撮影禁止で、緊張しながらのお参りだったけれど、なんとかミッションクリアした。
そのあと一旦引き返し、亀石を横目に池を渡ると、右手に大土乃御祖神を祀った別宮・土宮がある。
こちらは市街地の西にある、宮川の氾濫に困った昔の人々が祀った神様だ。
左手にある別宮・風宮は、級長津彦命、級長戸辺命を祀っている。
級長津彦命は伊弉諾尊と伊弉冉尊の間に生まれた風の神らしい。
そして級長戸辺命と同一の神とされたり、兄弟だったり、夫婦とも言われたり、色々だ。
こうやって二柱を合祀している神社も多くあるらしい。
名前の〝し〟は〝風〟、〝な〟は〝長い〟を意味していて、歴史で習った元寇を退けた神風を吹かせた神様だとか。
他にも航海の安全を守る神様、読み方から風邪を治す神様としても祀られている。
さらに奥には下御井神社がある。
こちらはお宮が木製の柵に囲まれていて、下御井鎮守神を祀ってある。
周囲はかなり木々が生い茂っていて、ちょっと恐い雰囲気がある。
今は大人数で回ってるから平気だけど、一人できたらビビったかもしれない。
囲いの中にある小さなお宮に見えるのは、井戸を覆う小屋みたいなものらしい。
下御井鎮守神は、伊勢神宮の神様が飲む御料水の守護神だそうだ。
外宮には上御井神社もあるけれど、そちらは一般に参拝する事はできない。
同じ井戸の神様だけど、〝上〟と〝下〟は文字通り上下関係にある。
上御井神社では、元旦に初めて組む、一年の邪気を払うと言われる若水(わかみず)を汲んでいる。
毎朝、浄衣を着た神職の方がお水を汲んで、神様にお供えしているらしい。
他にも伊勢神宮で醸造するお酒に使う水も、上御井の物を使っているとか。
メインで使っているのは〝上〟で、私たちが今いる〝下〟は〝上〟が何らかの理由で使えない時のサブ扱いだ。
「高天原――、まぁ、ざっくりと神様のいる所、にある井戸を忍穂井と言って、その水が丹後国比治の真名井――一説では、『丹後国風土記』にある奈具神社、または籠神社の奥宮にある、眞名井神社……を経て、豊受大御神が伊勢の外宮に住まいを移した時、この井戸にも高天原の水が宿った……とされてる。あとは、天岩戸と繋がってる説とか、天照大神の孫の瓊瓊杵尊が掘った説とか、色々な」
「ふーん……」
私は腕組みをして考えたあと、シュパッと挙手する。