部長と私の秘め事
「公演で世界中回るから、色んな所でコイン入れてるわね」
「あっ、トレビの泉的な」
私が合いの手を入れると、弥生さんは「そうそう!」と頷く。
そのあとも御正宮に向かって歩くけれど、砂利の道が広々としていて歩きやすいし、天照大御神を祀るだけあって、御正宮のほうから差し込む木漏れ日が神々しい。
通り道にとても立派な木があって、思わず触りたくなるけれど、神社の境内にある木は基本的に触ったらあかんのだ。
手水舎でお清めをしたあと、さらに鳥居をくぐり、外宮でも説明を受けた五丈殿、お酒を造る御酒殿やお供え物を収める由貴御倉、忌火を起こす忌火屋殿、祭典の時に神職の方々を清める祓所などを横目に、ずーっと進むと御贄調舎がある。
「何か、目隠しされてますね」
大きな衝立があるけれど、その他は一見、屋根と柱だけの建物に見える。
「ここはさっき言った神嘗祭の由貴大御饌を用意する時、天照大御神の大好物の鮑を用意するための場所だ。大好物を調理してる所を、神様に見られたらアレだろ? だから目隠ししてる訳」
「あ~……、なんか分かります。私も目の前でお肉焼かれてたら、ガン見しちゃう。嬉しくて華麗なステップ踏んじゃうかも」
「そんな感じ。清らかなお祭りだから、あくまでしっとりとな」
「んふふ」
私たちは笑い合ったあと、階段を上がって鳥居をくぐり、御正殿を参拝する。
外宮の時に学んだお作法に気をつけ、先ほどと同じように日頃の感謝と世界平和を願っておく。
そのあと、例によって別宮・荒祭宮――外宮でいう所の多賀宮(たかのみや)へ行く事にした。
途中、御稲御倉という所があり、ここは抜穂――お供えするための稲穂が納められるらしい。
この建物は唯一神明造と言って、御正宮とほぼ同じ造りらしい。
全国津々浦々、神社には色んな建物の建築様式があるけれど、伊勢神宮は最も格式高い所なので、同じ建物を造るのを遠慮し、ここだけのオリジナルデザインなのだとか。
「あれが棟持柱な」
尊さんは建物の両脇にある柱を示す。
「建物ができたての頃は、屋根との間に隙間が空いているそうだが、二十年も経つと雨風に晒されて湿気を含んだりで、木が膨張し、時間が経つと共に隙間がぴったりになるらしい」
「なるほどー」
ミコペディアの説明を聞いたあと、私たちはいよいよ別宮・荒祭宮へ向かった。
「尊さん、私、多賀宮がとても好きになってきました」
そう言うと、彼はプハッと笑う。
「確かに、色々お願いしたくなるよな。……ただ、『ああしてください、こうしてください』って一方的に願望を押しつけるよりは、『今こういう事を頑張っていて、成し遂げるために努力しているので、お見守りください』って、あくまで自分が頑張る方向で参拝したほうがいいと思う」
「そうですよね~。神様としても『便利屋じゃないんだから』って思っちゃいますよね」
思わず、「沢山食べても健康診断に引っ掛からず、元気でいられますように」とお願いしそうになっていたけれど、努力しなきゃ駄目だ。努力……。
そして別宮・荒祭宮への参拝を終えて、無事伊勢神宮のお参りが終わった。
「さて~! お陰様でのおかげ横町!」
「あはは! 朱里さん、水を得た魚みたい」
「朱里だから、赤福が呼んでるんですよ……」
それを聞き、大地さんが「わはは!」と笑う。
私たちはおかげ横町の街並みを楽しみつつ、赤福については本店に行きたいので、内宮前支店を横目で見ながら通り過ぎる。
「くんくん、こっちにお団子の匂いがしますね……」
途中でまた先ほどのように皆さんとばらけ、別行動になった私は、マップを見ながら足を進める。
「センサーがビンビンになってそうだな」
「この上ない感度です」
〝感度〟と聞いた尊さんは何か考えたようだけれど、今はそういう場合じゃないと思ったらしく、特に何も言わなかった。
そして私はお団子屋さんで、黒蜜だれの串団子を食べた。
さらにお目当ての赤福本店へ行き、お土産用の赤福、ぜんざいを大量購入し、夏季限定の水羊羹も買う。
そしてやはり夏季限定の、お抹茶味のかき氷を美味しくいただいた。
八月だし、汗ダラダラだけれど、こういう嬉しい夏季限定に出会えるので嬉しい。
さらに歩いて伊勢醤油本舗へ行き、伊勢醤油ソフトクリームを食べる。
「腹壊さんようにな」
「大丈夫です。自分、頑丈なので」
「どこの俳優だよ」
他にも色々と、漬け鮪のてこね寿司など心惹かれる物があったけれど、もう夕方近くでホテルでの豪華夕ご飯が待っているので我慢した。
尊さんはまた例によって、現地のコーヒー豆を買っていた。
**
「あっ、トレビの泉的な」
私が合いの手を入れると、弥生さんは「そうそう!」と頷く。
そのあとも御正宮に向かって歩くけれど、砂利の道が広々としていて歩きやすいし、天照大御神を祀るだけあって、御正宮のほうから差し込む木漏れ日が神々しい。
通り道にとても立派な木があって、思わず触りたくなるけれど、神社の境内にある木は基本的に触ったらあかんのだ。
手水舎でお清めをしたあと、さらに鳥居をくぐり、外宮でも説明を受けた五丈殿、お酒を造る御酒殿やお供え物を収める由貴御倉、忌火を起こす忌火屋殿、祭典の時に神職の方々を清める祓所などを横目に、ずーっと進むと御贄調舎がある。
「何か、目隠しされてますね」
大きな衝立があるけれど、その他は一見、屋根と柱だけの建物に見える。
「ここはさっき言った神嘗祭の由貴大御饌を用意する時、天照大御神の大好物の鮑を用意するための場所だ。大好物を調理してる所を、神様に見られたらアレだろ? だから目隠ししてる訳」
「あ~……、なんか分かります。私も目の前でお肉焼かれてたら、ガン見しちゃう。嬉しくて華麗なステップ踏んじゃうかも」
「そんな感じ。清らかなお祭りだから、あくまでしっとりとな」
「んふふ」
私たちは笑い合ったあと、階段を上がって鳥居をくぐり、御正殿を参拝する。
外宮の時に学んだお作法に気をつけ、先ほどと同じように日頃の感謝と世界平和を願っておく。
そのあと、例によって別宮・荒祭宮――外宮でいう所の多賀宮(たかのみや)へ行く事にした。
途中、御稲御倉という所があり、ここは抜穂――お供えするための稲穂が納められるらしい。
この建物は唯一神明造と言って、御正宮とほぼ同じ造りらしい。
全国津々浦々、神社には色んな建物の建築様式があるけれど、伊勢神宮は最も格式高い所なので、同じ建物を造るのを遠慮し、ここだけのオリジナルデザインなのだとか。
「あれが棟持柱な」
尊さんは建物の両脇にある柱を示す。
「建物ができたての頃は、屋根との間に隙間が空いているそうだが、二十年も経つと雨風に晒されて湿気を含んだりで、木が膨張し、時間が経つと共に隙間がぴったりになるらしい」
「なるほどー」
ミコペディアの説明を聞いたあと、私たちはいよいよ別宮・荒祭宮へ向かった。
「尊さん、私、多賀宮がとても好きになってきました」
そう言うと、彼はプハッと笑う。
「確かに、色々お願いしたくなるよな。……ただ、『ああしてください、こうしてください』って一方的に願望を押しつけるよりは、『今こういう事を頑張っていて、成し遂げるために努力しているので、お見守りください』って、あくまで自分が頑張る方向で参拝したほうがいいと思う」
「そうですよね~。神様としても『便利屋じゃないんだから』って思っちゃいますよね」
思わず、「沢山食べても健康診断に引っ掛からず、元気でいられますように」とお願いしそうになっていたけれど、努力しなきゃ駄目だ。努力……。
そして別宮・荒祭宮への参拝を終えて、無事伊勢神宮のお参りが終わった。
「さて~! お陰様でのおかげ横町!」
「あはは! 朱里さん、水を得た魚みたい」
「朱里だから、赤福が呼んでるんですよ……」
それを聞き、大地さんが「わはは!」と笑う。
私たちはおかげ横町の街並みを楽しみつつ、赤福については本店に行きたいので、内宮前支店を横目で見ながら通り過ぎる。
「くんくん、こっちにお団子の匂いがしますね……」
途中でまた先ほどのように皆さんとばらけ、別行動になった私は、マップを見ながら足を進める。
「センサーがビンビンになってそうだな」
「この上ない感度です」
〝感度〟と聞いた尊さんは何か考えたようだけれど、今はそういう場合じゃないと思ったらしく、特に何も言わなかった。
そして私はお団子屋さんで、黒蜜だれの串団子を食べた。
さらにお目当ての赤福本店へ行き、お土産用の赤福、ぜんざいを大量購入し、夏季限定の水羊羹も買う。
そしてやはり夏季限定の、お抹茶味のかき氷を美味しくいただいた。
八月だし、汗ダラダラだけれど、こういう嬉しい夏季限定に出会えるので嬉しい。
さらに歩いて伊勢醤油本舗へ行き、伊勢醤油ソフトクリームを食べる。
「腹壊さんようにな」
「大丈夫です。自分、頑丈なので」
「どこの俳優だよ」
他にも色々と、漬け鮪のてこね寿司など心惹かれる物があったけれど、もう夕方近くでホテルでの豪華夕ご飯が待っているので我慢した。
尊さんはまた例によって、現地のコーヒー豆を買っていた。
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