部長と私の秘め事
 そのあと二人で背中合わせに歯磨きをし、「お先にどうぞ」と言われたので尊さんにはリビング側に移動してもらい、服を脱いでシャワーを浴び始めた。

 勿論、ベッドに湿気がいったら困るので、仕切りのドアは閉めてある。

 私は髪を洗ってクリップで留め、体を洗いながら尊さんを想う。

(ミコと言えばシャワー突撃隊)

 初回もそうだったし、彼はたびたびシャワーの途中で乱入してくる。

 なので今か今かと胸を高鳴らせていると、背後でドアが開閉する音がした。

 シャワースペースは目隠しがあるので見えないけれど、多分服を脱いでいるんだろうか。

(いつでも来なさい。受けて立つ)

 私は前を向いたまま、知らないふりをして泡立てネットでモコモコ泡を作り、体を洗っていく。

「お邪魔してもいいですか?」

 やがて後ろから声がし、私は「キターッ!」と内心で声を上げた。

「……来いよ」

 私はチラッと肩口で振り向き、恵の真似をする。

「どこの男前だよ」

 尊さんはクスクス笑い、「汗でベタベタだ」と言ってシャワーを浴びる。

「洗って差し上げます」

 私はクルッと後ろを向き、尊さんに抱きついてヌルヌルと泡を擦りつける。

「こら、どこの風俗だ」

「嬉しいくせに~」

 ツンツンと胸板をつつくと、彼は濡れた前髪を掻き上げて溜め息をついた。

「泣かすぞ」

「……や、やれるものなら……」

「ほう」

 尊さんは目を細め、両手で私のお尻を鷲掴みにしてきた。

「ひゃ……っ」

 私は声を上げかけ、両手で口を押さえる。

 温泉に浸かりながら景色を楽しみたいので、テラスに続くガラス戸は開けっぱなしになっているからだ。

「そのまま」

 尊さんが耳元で低く囁いたあと――、私は久し振りに快楽を与えられ、気持ち良くなってしまったのだった。

 後ろから攻められるのは昭人の事で少しトラウマがあったけれど、今回は少し乗り越えられた気がした。





 疲れ切ってぐったりしていると、彼はシャワーヘッドを持って私の体を洗い、「向こう行ってあったまってな」と温泉を示した。

「お先にいただきまーす」

 私は断りを入れ、ペタペタと温かい床を踏んでかけ湯をし、温泉に浸かる。

「あ”ぁ~……、いいお湯、いい眺め、夢気分」

「どっかで聞いたフレーズだな」

 シャワーを浴びながら、尊さんが笑う。

 やがて彼も髪と体を洗い終えて湯船に浸かり、「はぁ……」と溜め息をつく。

「沢山歩いて疲れたろ。ふくらはぎ揉んでやる」

「え、いいですよ。尊さんだって疲れてるし」

「俺はいいんだよ。鋼鉄のふくらはぎをしてるから」

「マジですか。いつから人間やめたんですか」

 そんな会話をしながら、尊さんは私のふくらはぎを揉み、中心部をグーッと縦に指圧していく。

「あ”ぁ~……」

「さっきから声がおっさん臭ぇんだよ」

 クスクス笑われ、私は調子にのってまた「あ”ぁ~……」と言う。

「テレビで見た動物園のサルで、すっげぇ声出すのいたよな」

「ああ! 知ってる!」

 なんとも、悲哀というか情感たっぷりの声を上げるサルを思い出し、私はケラケラ笑う。

 喋ってゆったりと温泉に浸かっていると、楽しかったけれど少し疲れた体が癒されてくる。

「……さっき、大丈夫だったか?」

「ん?」

「後ろから苦手だったろ。少しでも嫌じゃなかったか?」

 尋ねられ、私は微笑んで尊さんの腕を組む。

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