部長と私の秘め事
(最終日までゴージャスだぁ……)

 私はつい手を合わせてなむなむしそうになるのを堪え、セレブばっかりいそうなロビーをあとにする。

 ずっとお世話になった運転手さんとはこれでお別れで、大地さんは予定していた料金に加え、お土産的な物も渡していた。

 勿論、道中で私たちが宿泊していた時は、近くのホテルを手配してそちらも負担していたそうだ。

「大阪まで来ると、一気に都会に来た感があるわね」

 ちえりさんが言い、楽しそうな顔で周囲を見回す。

 ホテルは大阪市中央区本町(ほんまち)にあり、私たちはベタだけれど、大阪城に行くために中央線に乗った。

「大阪、修学旅行で来たので初めてではないんですけど、大人になってからは二回目です」

「そうか。一回目は?」

 昼間なので凄く混んではいないけれど、尊さんは私を守るような場所に立ってくれている。

「恵と一緒に食い倒れです。お好み焼きとかたこ焼き、串揚げとかを食べて、テーマパーク行って、水族館に行って」

「あー、そっか。中村さんじゃあ仕方ないか……」

「ん? 嫉妬してるんですか? クリクリクリ」

 私は尊さんの胸板をツンツクつつく。

 すると彼はジロリと私を睨み、その反応がおかしくてニヤニヤしてしまった。

 駅で降りたあと、私たちは大阪城の敷地内をゆっくり歩く。

「大阪・夏の陣」

 日傘を開いた私は、歩きながら知っている単語を口にする。

「徳川アカリが豊臣に勝って、大阪中を食い散らかすんだな」

「うーん、アカリン饅頭とか売りますね。その辺にもアカリン旗を揚げて、アカリンワールドってテーマパークを展開します。勿論グルメには手を抜きません」

「ははっ、野望がでけぇ」

「尊さんの事は小姓にしてあげますよ」

「マジか、小姓か」

「それにしても、昔の武将って傍に美少年を置いて……ナンチャラ……って本当なんでしょうかね?」

「おいおい……」

「涼さんが武将で、男装した恵が小姓だったら同人誌がバカ売れしそうです」

「勿論、でけぇスポンサーがつくから、すげぇ豪華な本になるんだろうな。メディア化もしそうだ」

「ひひひ、やりそう」

「……中村さん、刀持っても強そうだな」

「強そうですねぇ。眼帯してたら格好いいですね。……で、こう……、さらしを巻いてるんですよ」

 そのあと、涼さんと二人きりになった時の男装小姓を想像したけれど、恵に怒られそうなのでやめておいた。

「あー、遠くにお城が見えてます」

 私は立ち止まり、写真を撮ろうとする。

 けれどスマホを弄ると日傘を支えられず、ゴンッと支柱が頭に当たって「イテッ」と声を漏らしてしまった。

「ほれ」

 すると尊さんが日傘を持ってくれ、私は「ありがとうございます!」と笑う。

「そうやってくれると、お嬢様になった気分です」

「一日限定で執事になるのも、やぶさかじゃねぇけどな」

「執事たちの沈黙……」

「沈黙するのはいいとして、俺の他に執事雇うなよ」

「ひひひ、妬いてる」

「妬くよ。お嬢様は俺だけのもんだ」

「うれぴっぴ」

 私たちが日傘の陰でそんなやり取りをしている間、他のみんなはゆっくり歩いている。

 写真を撮った私は「ありがとうございます」と日傘の持ち手を受け取り、再度歩き始めた。

 しかし敷地が広くて、いい運動になる。春は桜が咲いて綺麗な場所らしい。

 やがて屋台が並んでいる場所に着いて、思わずガン見しつつ鼻をスンスンしてしまう。

「これこれ、あとから店に行くから」

「はい……」

 城壁にはとても大きな岩が使われていて、中でも蛸石(たこいし)と呼ばれる物が最大だそうだ。

 ミコペディアによると、大阪城を築く際に日本全国から石が運ばれてきて、その総数は百万個以上にもなるという。

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