部長と私の秘め事
「楽しそう!」

「だと思ってたよ。しっかり楽しむぞ」

「うい!」

 地下はお土産屋さんになっていて、提灯が沢山ある所や、ビリケンさんの顔の〝真実の口〟もある。

「尊さん、写真撮って~!」

 ズボッと手を入れてピースすると、彼は「物怖じしねぇな……」と言いつつシャッターを切ってくれた。

 そのあとチケット売り場でチケットを買い、行列に並んでエレベーターに乗る。

 途中でエレベーター内が暗くなり、ドリーミーな色合いの雲と月が天井に現れる。

 かと思えば、モニターでは通天閣が発射して空へ飛んで行くアニメーションが流れ、面白い。さすが大阪という感じだ。

 まず着いたのは五階の展望台だ。

「あー! 動物いる!」

「天王寺動物園だな。あの高いビルがあべのハルカス」

 場所を変えて尊さんが指さした先を見て、私は「ホントだ!」と頷く。

 新世界にもあったけれど、ここにもビリケンさんの像があり、絵馬も奉納されてある。

 せっかくなのでお参りをして、絵馬も書いておいた。

「……ところでビリケンさんって、何の神様ですか?」

「ああ、日本由来のものじゃなくて、アメリカの女性芸術家が夢に見た、幸福の神様らしい。当時の大統領ウィリアム・ハワード・タフトの愛称ビリーに、『小さい』を表すケンをつけたのが由来だそうだ。一九〇〇年頭に日本に伝わって、さっそく浪速の商人が商標登録をしてグッズを売っていったとか」

「へぇ~」

 私はビリケンさんの足の裏をなでなでしつつ、頷く。

 さらにネオンでレインボーに光る階段を上がっていくと、フェンスで囲まれた屋外展望台に着いた。

 グルッと一周すると、跳ねだし展望台という、ジャンプ台みたいにせり出している所に行く。

 周囲はしっかりフェンスで囲まれているけれど、先端に行くまで足元は網、先端の床はガラスだ。

「ひひひ、恐い。おっほぉ……。シャ、シャッターチャンス……」

 手まで震える中、自撮り棒を構えるけれど、ブレブレになりそうだ。

 ガラスの床を覗き込むと、遙か下に地面があって、ガクガクと脚が震える。

「どれ、俺が撮ってやる」

 尊さんは自撮り棒を受け取り、「これか?」とボタンを押した。

 若干笑顔が強張っていたかもしれないけれど、尊さんとの大阪思い出作りに成功だ。

「高い所苦手なら、別に行かなくても良かったのに……」

「尊さんとなら高い所だってプライスレス!」

「いや、そこ頑張るなよ……」

 三階に下りると、ガラス窓のあちこちに〝んまい棒〟のポスターが貼られてある。

 加えて極太パッキーの筒に赤い紐が何本も通され、二人で両側から引っ張って、見事同じ紐を引いたら結ばれるというのがあった。

 他にもジャスト十一秒一一を体内時計で計ってボタンを押すゲームもチャレンジしたし、大きなガリコの看板の前で、ガリコポーズを撮って記念撮影した。

 ビリケンさんの顔ハメ写真スポットもあったので、しっかりハメて記念撮影しておく。これで恵を笑わせてやる。

 そしてパッキーの箱でハート型を作ったフレームのフォトスポットもあり、近くにいた人に頼んで尊さんと記念撮影をした。

 で、いよいよスライダーである。

 ヘルメットを被って三階から地下一階まで、二十二メートルの落差を滑り下りていく。

「あっ、ウォータースライダーみたいに、寝転んで手を胸にやる奴なんですね」

「俺、先に行って待ってるか?」

「はい」

 先に行くよりは、尊さんが待っていてくれるほうが嬉しい。

 彼はヘルメットを被って、さほど表情を変えずにスッとスライダーを滑っていった。

 私も準備をしていると、やがて信号が青になり、スタッフさんがマットを押してくれる。

「ひえ……っ、ヒエエエエエエエエエエエエッッッッ!!!!」

 チューブの中を物凄い勢いで下り、なんか……、内臓がウウウウッと上がってくる。

 透明なチューブから外の景色が見えたと思いきや、レインボーカラーで光るチューブ内を滑り落ち、あっという間に地下一階に着いていた。

「おおおおおおおおおお………………」

 呆けていると、「大丈夫か?」と尊さんが手を振っている。

 スタッフさんに助けてもらって立ちあがると、なんだかフラフラして尊さんに掴まってしまった。

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