部長と私の秘め事
「しゃーわせぇ……」
しみじみと言うと、尊さんに「安上がりだなぁ」と笑われる。
「美味しくて安かったら、最高じゃないですか」
「まぁな。……っていうか、何でも楽しめる朱里の才能が羨ましい……、というか……。好きだ」
「えへ、えへへへへ……」
私は照れ笑いをし、「このこの~」と尊さんの脇腹をツンツクする。
「朱里はそうじゃねぇけど、やっぱり高級なものを知ったら、安いものに戻れない人って一定数いるだろ。たとえば『自分の中の最高のハンバーグはあの店で、あのレベルより下の物は食べられない』とか」
「あー、気持ちは分かります」
確かに美味しい食べ物に慣れたり、高級品に慣れたら、そういう思考になってしまう人は一定数いるだろう。
贅沢に慣れると、生活水準を戻すのが難しいとも言うし。
「そういうもんだと分かっていても、高級志向じゃない、普通のラーメンとか牛丼、チェーン店に行きたいって言ったら、あからさまにガッカリする人もいるからなぁ……。だから何でも楽しめる朱里は凄いと思ってる」
「えへへ、ありがとうございます!」
尊さんは具体的に言わなかったけれど、多分過去にちょろっと付き合った女性がそうだったんだろう。
夏目さんは『奢らせてくれなかった』と言っていたし、実際に彼女に会ったから分かるけど、そういう事を言う人じゃない。
でも私も十分に俗っぽいところがあるし、彼が思う〝理想の存在〟じゃない。
過去に口に合わないお店はあったし、苦手な物もある。
お肉の臓物系や海の幸の変わった物系は、普段食べないので何となく苦手感があるのだ。
あと、意外と〝当たったら恐い〟系の物は、必ず火を通すとか慎重な面もある。
けど多分、喰わず嫌いな物も、グルメな尊さんが美味しいお店に連れて行ってくれたら、あっさりクリアできる気がする。
それでも食べ慣れない物で、調理が良くなかったり、素材が新鮮じゃなかったりしたら、多分苦手さを感じると思う。
普通のお肉やお魚なら、よっぽどでない限りペロリなんだけれど、慣れない物は難しいのだ。
「次、どこ行きます?」
今は十六時半前で、皆さんとの集合時間は十九時だけれど、まだ時間がある。
「えーと、豚まんとチーズケーキは伊丹空港で買うとして、道頓堀にでも行くか」
「はいっ」
私はガリコのポーズをとって元気良く返事をした。
タクシーに乗って十五分ほどで道頓堀に着き、これぞ大阪! という街並みを見て気分が一気に上がった。
私と尊さんは、戎橋のガリコの看板がよく見えるスポットで、近くにいた人に頼んで記念撮影をしてもらった。
尊さんは乗ってくれなかったけど、私は思いきりガリコポーズをとった。
「わー、ここが野球ファンが飛び込む川ですね……」
「一応、飛び込み禁止だけどな」
道頓堀添いには、ずらりと提灯が並んでいる。
ちょうど今は道頓堀川万灯祭が開催されている最中で、千三百個もの提灯が飾られているそうだ。
「船乗るか。確か三十分ごとに運航していて、所要時間は二十分。当日券でいけるはずだ」
「はい! やったー! 船!」
その後、私たちはドキン・ホーテの前にあるチケット売り場で乗船券を買い、十七時の船に乗った。
桟橋は歩道とほぼ変わりない高さにあり、船に乗ると通行人と目が合いそうで照れてしまう。
そしてやっぱりこういうものは現地の人は乗らないようで、六十人乗りの船に乗った半分近くは海外の方だった。
黄色いカッパを着た元気のいお兄さんがマイクで挨拶をし、いざ出発だ。
クルーズでは九つの橋をくぐるようで、橋の底との距離もあまりないので迫力がある。
お兄さんがマイクで橋や大阪の街並みを紹介してくれる中、観光客なのか地元の方なのか、ノリが良くてみんな手を振ってくれる。
戎橋も大きな橋だったけれど、道頓堀橋も上を御堂筋が通っているので面積の広い橋だ。
そこを抜けると左右の建物の下にはズラリとストリートアートがあり、マンションの壁にもアートがあるので、まるで外国に来たように思える。
日によっては水位が上がる時もあって、頭がギリギリ橋に擦れそうな時もあるそうだ。
途中で船は住宅街に入り、お兄さんもマイクをオフにする。
Uターンしたあと、また戎橋のほうへ向かって短い旅は終わった。
しみじみと言うと、尊さんに「安上がりだなぁ」と笑われる。
「美味しくて安かったら、最高じゃないですか」
「まぁな。……っていうか、何でも楽しめる朱里の才能が羨ましい……、というか……。好きだ」
「えへ、えへへへへ……」
私は照れ笑いをし、「このこの~」と尊さんの脇腹をツンツクする。
「朱里はそうじゃねぇけど、やっぱり高級なものを知ったら、安いものに戻れない人って一定数いるだろ。たとえば『自分の中の最高のハンバーグはあの店で、あのレベルより下の物は食べられない』とか」
「あー、気持ちは分かります」
確かに美味しい食べ物に慣れたり、高級品に慣れたら、そういう思考になってしまう人は一定数いるだろう。
贅沢に慣れると、生活水準を戻すのが難しいとも言うし。
「そういうもんだと分かっていても、高級志向じゃない、普通のラーメンとか牛丼、チェーン店に行きたいって言ったら、あからさまにガッカリする人もいるからなぁ……。だから何でも楽しめる朱里は凄いと思ってる」
「えへへ、ありがとうございます!」
尊さんは具体的に言わなかったけれど、多分過去にちょろっと付き合った女性がそうだったんだろう。
夏目さんは『奢らせてくれなかった』と言っていたし、実際に彼女に会ったから分かるけど、そういう事を言う人じゃない。
でも私も十分に俗っぽいところがあるし、彼が思う〝理想の存在〟じゃない。
過去に口に合わないお店はあったし、苦手な物もある。
お肉の臓物系や海の幸の変わった物系は、普段食べないので何となく苦手感があるのだ。
あと、意外と〝当たったら恐い〟系の物は、必ず火を通すとか慎重な面もある。
けど多分、喰わず嫌いな物も、グルメな尊さんが美味しいお店に連れて行ってくれたら、あっさりクリアできる気がする。
それでも食べ慣れない物で、調理が良くなかったり、素材が新鮮じゃなかったりしたら、多分苦手さを感じると思う。
普通のお肉やお魚なら、よっぽどでない限りペロリなんだけれど、慣れない物は難しいのだ。
「次、どこ行きます?」
今は十六時半前で、皆さんとの集合時間は十九時だけれど、まだ時間がある。
「えーと、豚まんとチーズケーキは伊丹空港で買うとして、道頓堀にでも行くか」
「はいっ」
私はガリコのポーズをとって元気良く返事をした。
タクシーに乗って十五分ほどで道頓堀に着き、これぞ大阪! という街並みを見て気分が一気に上がった。
私と尊さんは、戎橋のガリコの看板がよく見えるスポットで、近くにいた人に頼んで記念撮影をしてもらった。
尊さんは乗ってくれなかったけど、私は思いきりガリコポーズをとった。
「わー、ここが野球ファンが飛び込む川ですね……」
「一応、飛び込み禁止だけどな」
道頓堀添いには、ずらりと提灯が並んでいる。
ちょうど今は道頓堀川万灯祭が開催されている最中で、千三百個もの提灯が飾られているそうだ。
「船乗るか。確か三十分ごとに運航していて、所要時間は二十分。当日券でいけるはずだ」
「はい! やったー! 船!」
その後、私たちはドキン・ホーテの前にあるチケット売り場で乗船券を買い、十七時の船に乗った。
桟橋は歩道とほぼ変わりない高さにあり、船に乗ると通行人と目が合いそうで照れてしまう。
そしてやっぱりこういうものは現地の人は乗らないようで、六十人乗りの船に乗った半分近くは海外の方だった。
黄色いカッパを着た元気のいお兄さんがマイクで挨拶をし、いざ出発だ。
クルーズでは九つの橋をくぐるようで、橋の底との距離もあまりないので迫力がある。
お兄さんがマイクで橋や大阪の街並みを紹介してくれる中、観光客なのか地元の方なのか、ノリが良くてみんな手を振ってくれる。
戎橋も大きな橋だったけれど、道頓堀橋も上を御堂筋が通っているので面積の広い橋だ。
そこを抜けると左右の建物の下にはズラリとストリートアートがあり、マンションの壁にもアートがあるので、まるで外国に来たように思える。
日によっては水位が上がる時もあって、頭がギリギリ橋に擦れそうな時もあるそうだ。
途中で船は住宅街に入り、お兄さんもマイクをオフにする。
Uターンしたあと、また戎橋のほうへ向かって短い旅は終わった。