部長と私の秘め事
 それから十分ほどで、私たちは三田のマンションに帰った。

「うぇー……い……」

「なんだその、虫の息のパリピみたいな声は」

「セミファイナルなパリピです」

「最後の力を振り絞る奴じゃねぇか」

 車から降りると、マンションの荷物スタッフさんが出てきて、沢山の荷物を台車に載せてくれる。

 鉢村さんも荷物を移すのに協力してくれ、お礼に彼用のお土産を渡した。

「ありがとうございます。家族といただきますね」

 温厚そうな四十代後半の彼は、そう言って微笑む。

 鉢村さんは三田のマンションまで自分の車で来て、尊さんの車のスペアキーを使って空港まで来てくれた次第だ。

 私たちがエレベーターに向かう途中、鉢村さんはペコリとお辞儀をして地下駐車場へ向かった。

「あぁ~……、ようやくおうちに帰れる……」

「寝落ちするのは風呂入ってからな」

「あい」

 フロアに着いたあと、尊さんは家の鍵を開け、スタッフさんと一緒に荷物を玄関ホールに運び込む。

 私も手伝おうとしたけれど、「水分補給しとけ」と指示を受けてしまった。

 久し振りに家に帰ったからか、リビングダイニングに置いてあるディフューザーが、フワッと香って〝日常〟を知らせてくる。

 キッチンに向かうと、キッチン台に町田さんからのメモが置かれてあった。

【立て続けの旅行、お疲れ様でした! ジューススタンドで、疲労回復に良さそうなジュースを買っておきましたので、良かったらお飲みください。明日は疲労回復メニューで夕ご飯を用意いたしますね】

 それを見てから冷蔵庫を開けると、『トーキョージュース』の瓶詰めのジュースが、何種類も入っていた。

 加えてお酢系の飲み物や、クエン酸系の飲み物も入っている。

「町田しゃああん……」

 私は冷蔵庫に向かって手を合わせ、なむなむと拝む。

 ひとまずお水をゴクゴク飲んでいると、尊さんがパントリーを通ってキッチンに現れ、キッチン台に紙袋を置いていく。

「町田さんにサブの冷蔵庫を開けてもらうように頼んだけど、大丈夫そうか?」

 言われてサブ冷蔵庫を開けると、引っ越ししたてのようにカラッとしている。

 チョコレートとか日持ちするお菓子、飲み物などは入っているけれど、洋菓子の箱は十分に入りそうだ。

 尊さんはスマホが自動で消えないように設定し、メモを開くと、お菓子の箱に何が入っているかをマジックで書き、冷蔵庫にしまっていく。

「すごぉい……。抜かりなしミコ」

「沢山買ったら混乱するからな。……っていうか、マジで全部食えるか?」

「はい!」

「頼もしいな……」

 尊さんは賞味期限なども確認しながら、少し日持ちする物は奥へしまっていく。

 彼は迷いのない手つきで作業していくので、手伝いたくても手を出せず、見守るしかできない。

 やがてすべてをしまい終わったあと、私は「ありがとうございました」とペコリと頭を下げる。

「別にお礼を言うほどの事じゃねぇだろ。ほれ、風呂入って来い」

 尊さんにペンッとお尻を叩かれ、びっくりした私は「ぴゃっ」と跳び上がる。

「家に帰った途端、セクハラミコですね!?」

「はいはい、いいから風呂入れ。俺もシャワー浴びてくる」

 そう言って尊さんは、マスターベッドルームに向かった。

(尊さんの家なのに、お風呂独占して申し訳ないなぁ……)

 私は一旦自室へ行き、荷物を置いてから洗面所へ向かう。

 旅行へは今まで買い物した時にもらった、基礎化粧品のミニサイズを持って行ったので、普段家で使っている大きいサイズの物はそのまま置いてある。

(疲れた顔してる……)

 大きな鏡に映った自分を見て溜め息をついた私は、服を脱いでから髪をクリップで留め、アイメイクを落としてから、クレンジングオイルでメイクを落としていく。

 手を洗ったあと、収納からオスキアのバスオイルを出すと、キャップで測ってからバスタブに垂らした。

 するとお湯がフワッと乳白色に変わり、柑橘やベリーの爽やかな香りが立ち上った。

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