部長と私の秘め事
 最後に覚悟を決めて体重計に乗ると……、三キロ増しで五十七キロになっていた。

「うーん……。何とかなるか」

 二十六年生きてきて、大体自分の体がどうなっているかは掴んでいる。

 沢山食べて何も動かない日は、何キロか増えて、次の日の朝には大体元に戻っている。

 だから今回も寝て起きればなんとかなると思っていた。

 恵からは「羨ましい。化け物」と言われているけれど、きっと沢山食べる私に、神様が与えてくれた特別仕様のボディなんだと思っている。

(きっと前世は餓死してしまった、可哀想な子だったんだ……)

 そんな事を思いながら、私は髪をブラッシングしてからバスルームに入った。

 全身をサッと流したあと、まずじっくり頭を予洗いして、エストのスカルプジェルで頭皮の角質を綺麗にしてから、シャンプーを始める。

 先にこれをやると、頭皮の汚れがなくなるからか、とても泡立ちが良くなる。

 ラ・カスタ プロフェッショナルのシャンプーを使ったあと、ウカのスカルプブラシで頭皮をマッサージし、「あぁ~……」と声を漏らす。

 水気を切ってから、美容室でトリートメントをした際、料金に含まれていてホームケア用にもらえる、小箱に入っているラ・カスタのヘアマスクをする。

 これはどこにも売っておらず、サロンでしかもらえないので特別感がある。

 ……フリマアプリで見つけた時は、見なかったフリをしたけれど……。

 それから水気を切り、目の粗いコームでとかしてから、お風呂の中に持ち込めるトリートメントアイロンをかけた。

 普通のヘアアイロンとは違って、超音波とかでトリートメントの浸透を良くしてくれるグッズだ。

 充電式で、お風呂の中に持ち込んでも大丈夫な作りになっている。

 それが終わったあと、洗面所から持ってきたホットタオルで髪を包み、ジョー・マローンのボディソープを泡立ちネットで泡立てて全身を洗い、秘所はデリケートゾーン専門の泡ソープで洗う。

 一旦体を流したあと、またジョー・マローンのボディスクラブを全身にくまなく滑らせ、洗い流す。

 ホットタオルをとってヘアマスクを洗い流したあと、目の粗いコームで梳かしてクリップで留め、エストのジェル洗顔で顔を洗う。

 一通り終わったあと、ようやく湯船に浸かり「ふわー……」と声を漏らした。

 無意識に両手でふくらはぎを雑巾絞りのようにマッサージし、セルライト撲滅を願って太腿までギューッと搾っていく。

 ある程度マッサージが終わったあと、ようやく何もしない時間が訪れた。

 私はリモコンでバスルームの照明を落とし、リラックスできる状態にする。

(あぁー……、疲れたな。沢山楽しい事があって、沢山美味しい物を食べて幸せだった)

 私はミスト化粧水をプシュプシュと顔に掛け、ハンドプッシュしつつ溜め息をつく。

(尊さんと百合さん、距離が近づいて良かったな)

 百合さんの誕生日も兼ねていたから、豪華な旅だったと思うけれど、あの二人が距離を縮めるための旅行でもあった。

 大地さんのプランはパーフェクトだったし、ちえりさんも小牧さんも弥生さんも、終始明るく振る舞ってくれて、ありがたかった。

 そして将馬さんも、百合さんが色々と考えてしまう時に支えてくださったに違いない。

(沢山神社仏閣にも行ったし、みんな幸せになれますように)

 いつもは二十分ぐらいバスタブに浸かっている間、スマホを持ち込んで電子漫画を読んだりするけれど、今日はひたすら放心していた。

 ボーッとしている間にウトウトしてしまい、……どうやら寝てしまったらしかった。

「ふごっ!」

 鼻からお風呂の水を吸いかけ、私は激しく噎せて目を覚ます。

(いかんいかん。危ない危ない。死んでしまう)

 照明を明るくした私は、サッとバスタブから上がるとシャワーで全身を流し、洗い場も流してから、床の水気をスクイージーでとっていく。

 放置していても水はけが良く、乾きやすい加工がされているし、強力な浴室乾燥機もついているんだけど、今までの習慣でついやってしまう。

(洟かみたい……)

 まだ鼻の奥がツーンとしている私は、洗面所に出てズビーッと洟をかんだあと、F1のタイヤ交換チームもびっくりの手際で、フェイスケア、ボディケア、ヘアケアをしていった。





「ふいーっ! お風呂いただきました!」

「おう」

 尊さんはすでにシャワーでさっぱりし、着替えてソファでくつろいでいた。

「なんか、大きいお風呂優先して使ってしまってすみません」

 私はお水を飲みながら言う。

「別に? 俺はサッとシャワーで済ませたかったから、まったく問題なし」

「そうなんですか? ……それにしても疲れた時のバスタブは魔物が潜んでますね……。ちょっと寝ちゃって鼻からお湯吸っちゃった」

 そう言うと、尊さんはスッと真顔になった。

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