部長と私の秘め事
恵とは中学生時代からの付き合いで、勿論、昭人の事もとても良く知っている。
彼女は昭人との仲を物凄く応援してくれた訳ではなく、ただ見守っている感じだった。
だから私が昭人にフラれたあとも特に怒らず、『こんな事もあるって』と言っていた。
もしも恵が『信じられない! あいつ見る目ないよ!』って言っていたなら、私も昭人の隣にいるべきなのは自分だと思い、復縁しようと努力していたかもしれない。
でも恵は昭人が私をフッた事を不快に感じながらも、中立の態度を貫いていた。
『愚痴があるなら幾らでも聞くよ。でも私は男は田村だけじゃないと思う』
恵がそう言った時、私は彼女の冷静な態度に感謝しつつ『昭人以外の男性なんていない』と泣きべそをかいていたけれど……。
(……部長、か)
私は心の中で呟き、溜め息をつく。
チラッと部長室を見ると、今日も女性の先輩が彼のもとに行って、かしましくお喋りしている。
学校で言えば目立つ系の人が常に部長を狙っているので、私が彼の相手になるなんて考えた事もない。
(でも昨晩の事は突然すぎて、〝アリ〟かどうか考えられる心理状態じゃない)
溜め息をついた私はパソコンの電源を入れ、今日の予定を確認していく。
私が勤めている篠宮ホールディングスは、ビールと言えば……でパッと頭に思い浮かぶ大企業だ。
その他のアルコール類は勿論、コンビニやスーパーに置いてあるお茶やサイダー、腸内環境を整える乳酸菌飲料部門やホットコーヒー、困った時のエナジードリンクなど、商品は多岐にわたる。
企業メセナ――スポンサーとなって文化事業を応援する活動も行っていて、美術館を所有し、社内ロビーでのコンサートを行ったり、独自の芸術賞も有している。
他にもアートフェスティバルの開催、コアなアーティストが集まるライブハウス、プライズの協賛もしている。
スポーツの協賛もしていて、球団のオフィシャルスポンサーだったり、大きなマラソン大会、スキージャンプやその他諸々のスポンサーを担っている。
私は西日暮里に住んでいるので、会社までは三十分ぐらいの通勤時間で済んでいる。
部長はそんな大企業の商品開発部の部長なので、結構な社会的地位があり実力もある。
三十二歳でイケメンなのに独身だから、若い女性社員はほぼ全員彼を狙っているのでは……と思うぐらいだ。
だから余計に、私にとっては「釣り合わない」と感じる相手だった。
(仕事の話という事にして時間もらって、あの箱を返そう。それで終わり)
私はメールチェックしながら溜め息をつき、プリーツスカートの中で脚を組んだ。
恵はそんな私の横顔をしばらく見ていたけど、「何かあったら聞くからね」とポンと肩を叩き、自分のモニターを見た。
午後一番に会議があるので、お昼ご飯を食べた私はセッティングをしようと思い、資料を持って会議室に向かった。
パチンと電気をつけて入室し、テーブルに資料を置いた時――いきなり部長が入ってきた。
相変わらず妖艶で美形な彼に見とれてしまいそうだけど、言いたい事が沢山ありすぎる。
「……起きたらいないし、高額なジュエリーはあるし、くれるっていうし、受け取れないし、……何なんですか」
私は怒り……なのか分からない感情を押し殺し、矢継ぎ早に言ったあと、嘆いた。
「……勘弁してくださいよ……。一晩だけの遊びなら、もう放っておいて」
困惑した私はまた溜め息をつき、近くの椅子に腰かけた。
チラッと腕時計を見ると、昼休みが終わるにはまだ余裕がある。
「……とにかく、ジュエリーは受け取れませんから、誰か仲のいい女性にでもあげてくださいよ」
すると部長は私から適度に離れた席に座って言う。
「女友達なんていねぇよ。……妹から拒否られたから、お前にやるって言ってるんだ。誕生日なんだろ? 誕生日でクリスマスも近いのに、元彼は結婚するわでズタボロになってるって言ってたじゃねぇか」
「~~~~だからって、これはやりすぎです。私はただの部下で、部長と親しくした覚えもありません。私に『要らなかったら売れ』って言うなら、部長が自分で売ればいいじゃないですか」
部長はテーブルに頬杖をついて溜め息をつく。
「可愛くねぇ女だな。じゃあ、何が欲しいんだよ」
「ですから部長から誕生日を祝ってもらう理由はありません。私の事、好きなんですか? 違うでしょう? 今まで仕事の話以外、ろくに話した事ないんですから」
どうだと言わんばかりに彼を睨み付けると、部長は少し間を空けてから私を見つめて言った。
「好きだって言ったら?」
彼女は昭人との仲を物凄く応援してくれた訳ではなく、ただ見守っている感じだった。
だから私が昭人にフラれたあとも特に怒らず、『こんな事もあるって』と言っていた。
もしも恵が『信じられない! あいつ見る目ないよ!』って言っていたなら、私も昭人の隣にいるべきなのは自分だと思い、復縁しようと努力していたかもしれない。
でも恵は昭人が私をフッた事を不快に感じながらも、中立の態度を貫いていた。
『愚痴があるなら幾らでも聞くよ。でも私は男は田村だけじゃないと思う』
恵がそう言った時、私は彼女の冷静な態度に感謝しつつ『昭人以外の男性なんていない』と泣きべそをかいていたけれど……。
(……部長、か)
私は心の中で呟き、溜め息をつく。
チラッと部長室を見ると、今日も女性の先輩が彼のもとに行って、かしましくお喋りしている。
学校で言えば目立つ系の人が常に部長を狙っているので、私が彼の相手になるなんて考えた事もない。
(でも昨晩の事は突然すぎて、〝アリ〟かどうか考えられる心理状態じゃない)
溜め息をついた私はパソコンの電源を入れ、今日の予定を確認していく。
私が勤めている篠宮ホールディングスは、ビールと言えば……でパッと頭に思い浮かぶ大企業だ。
その他のアルコール類は勿論、コンビニやスーパーに置いてあるお茶やサイダー、腸内環境を整える乳酸菌飲料部門やホットコーヒー、困った時のエナジードリンクなど、商品は多岐にわたる。
企業メセナ――スポンサーとなって文化事業を応援する活動も行っていて、美術館を所有し、社内ロビーでのコンサートを行ったり、独自の芸術賞も有している。
他にもアートフェスティバルの開催、コアなアーティストが集まるライブハウス、プライズの協賛もしている。
スポーツの協賛もしていて、球団のオフィシャルスポンサーだったり、大きなマラソン大会、スキージャンプやその他諸々のスポンサーを担っている。
私は西日暮里に住んでいるので、会社までは三十分ぐらいの通勤時間で済んでいる。
部長はそんな大企業の商品開発部の部長なので、結構な社会的地位があり実力もある。
三十二歳でイケメンなのに独身だから、若い女性社員はほぼ全員彼を狙っているのでは……と思うぐらいだ。
だから余計に、私にとっては「釣り合わない」と感じる相手だった。
(仕事の話という事にして時間もらって、あの箱を返そう。それで終わり)
私はメールチェックしながら溜め息をつき、プリーツスカートの中で脚を組んだ。
恵はそんな私の横顔をしばらく見ていたけど、「何かあったら聞くからね」とポンと肩を叩き、自分のモニターを見た。
午後一番に会議があるので、お昼ご飯を食べた私はセッティングをしようと思い、資料を持って会議室に向かった。
パチンと電気をつけて入室し、テーブルに資料を置いた時――いきなり部長が入ってきた。
相変わらず妖艶で美形な彼に見とれてしまいそうだけど、言いたい事が沢山ありすぎる。
「……起きたらいないし、高額なジュエリーはあるし、くれるっていうし、受け取れないし、……何なんですか」
私は怒り……なのか分からない感情を押し殺し、矢継ぎ早に言ったあと、嘆いた。
「……勘弁してくださいよ……。一晩だけの遊びなら、もう放っておいて」
困惑した私はまた溜め息をつき、近くの椅子に腰かけた。
チラッと腕時計を見ると、昼休みが終わるにはまだ余裕がある。
「……とにかく、ジュエリーは受け取れませんから、誰か仲のいい女性にでもあげてくださいよ」
すると部長は私から適度に離れた席に座って言う。
「女友達なんていねぇよ。……妹から拒否られたから、お前にやるって言ってるんだ。誕生日なんだろ? 誕生日でクリスマスも近いのに、元彼は結婚するわでズタボロになってるって言ってたじゃねぇか」
「~~~~だからって、これはやりすぎです。私はただの部下で、部長と親しくした覚えもありません。私に『要らなかったら売れ』って言うなら、部長が自分で売ればいいじゃないですか」
部長はテーブルに頬杖をついて溜め息をつく。
「可愛くねぇ女だな。じゃあ、何が欲しいんだよ」
「ですから部長から誕生日を祝ってもらう理由はありません。私の事、好きなんですか? 違うでしょう? 今まで仕事の話以外、ろくに話した事ないんですから」
どうだと言わんばかりに彼を睨み付けると、部長は少し間を空けてから私を見つめて言った。
「好きだって言ったら?」