部長と私の秘め事
保護猫が飼い主に呼ばれて、近づくけれど、毛を逆立ててやんのかステップを踏んでるようなものだ。
もっとSNSの動画で見るような、「うわぁ~! 可愛い~!」となってしまう、愛される事を疑っていない、ラブリーニャンコにならなければ。
やっぱり私の理想は、常に朱里なのだ。
そう思った私は少しでも努力を見せようと、おもむろに両手を上げる。
「ん? ……レスリングのタックル?」
強張った顔をして両手を構えれば、そう捉えられても仕方がない。
しかしここで負けるな、私。
自分に気合いを入れた私は、眉間に皺を寄せ、顔を引きつらせてニチャア……と笑い、両手の親指と人差し指で、小さく指ハートをした。
「かわ……っ!!」
涼さんはすかさずデニムのポケットからスマホを出し、連写してくる。
「も~! なんで俺の恋人はこんなに可愛いの!」
彼は撮ったばかりの写真を見てクネクネしているけれど、私は凶悪犯みたいな顔をしてしまっただろう事を思い、ズン……と落ち込んでいる。
(もっと可愛く笑えるように練習しなきゃ。口角上げ五十回セット辺りからかな……。いや、もしも涼さんに見られたら『顔が引きつってる。病気!?』って心配される)
「はぁ……」と溜め息をついていた時、涼さんが「ねぇねぇ、どう?」とスマホの画面を見せてきた。
どこぞのブランドの商品ページで、全身にミラクルフィットしたタイトワンピースの写真だ。
「こんなん、全身タイツと変わらないじゃないですか。プロポーションにそんなに自信ないので無理です」
「ヒラヒラ系……? タイト……。ミニスカ……。レザー。……いや、デニムスーツ?」
涼さんはサッサッと画面をスクロールしつつ、チラチラと私の顔と画面を見比べる。
「レザーは殺生的に良くないからやめましょう。あとデニムもNGです」
「恵ちゃん、俺の家に法事に来るの? 数珠つけて挨拶に来たら、さすがにうちの家族もぶっ飛ぶよ?」
「仏壇があるなら手を合わせたいですけど、ご挨拶にレザーはないでしょう」
溜め息をつくと、涼さんは「そっかー」と言ってさらに画面をスクロールさせる。
「ちなみに恵ちゃん、好きなブランドってある?」
「分かって聞いてるでしょう。全然っす。というか、知らないし興味ないっす」
「俺が方向性を決めてもいい? 二人バラバラのブランドを着るより、同じブランドで統一したほうが仲良し感を出せるし」
「女子か」
「ああん」
スパッと突っ込みを入れたのに、涼さんは嬉しそうな声を上げる。
「……まぁ、任せますよ。こういうのは涼さんのほうが詳しいでしょうし、大まかな方向性が決まったら、どの服にするかぐらいは決めさせてくれるんですよね? 涼さんはセンスがいいから、丸投げでもいいんですけど」
「勿論だよ! 言うなれば、夕食何にしようか? って相談してて、俺が『肉系がいいかな~?』って鉄板焼きのお店に連れて行って、そこでステーキを頼むかハンバーグにするかは、恵ちゃんが自由に決められるんだよ」
「あ、分かりやすいっす。じゃあ、デ……、デート……、する日程が決まったら教えてください」
「オッケー!」
涼さんは片手でOKサインをして、顔に近づけて満面の笑みを浮かべて、某女性タレントの昔のポーズを真似る。
「古いっす」
私はそれに対してもスパッと突っ込みを入れ、思考を戻す。
「……嬉しい話をしてて、話題を切り替えて申し訳ないんですが、……私、朱里と会ってちゃんと話しますね」
「うん」
それまで冗談混じりに明るい話をしていたけれど、もとは会社で暴走してしまった私の反省会だった。
話を元に戻しても涼さんは不機嫌にならず、すんなり受け入れてくれた。
「俺としては、恵ちゃんのメンタル安定には、朱里ちゃんが必要不可欠と思ってる。だから君らが気まずくなったら、俺としても『何とかしないと』って思うしね。でも恵ちゃんが一人でも前に進めるなら、『いってらっしゃい』って送りだして、帰ってきたらまた話を聞くよ」
「……ありがとうございます」
ふざける時は「この人、本当に御曹司か?」って思うようなふざけ方をするけれど、基本的に涼さんはいい人で、とても大人だ。
だから私はこの人を無条件に信頼できるのだと思う。
「メッセージ送ります」
「うん」
私はポケットからスマホを出し、世界で一番綺麗で可愛い親友を想いつつ、メッセージを打っていった。
**
もっとSNSの動画で見るような、「うわぁ~! 可愛い~!」となってしまう、愛される事を疑っていない、ラブリーニャンコにならなければ。
やっぱり私の理想は、常に朱里なのだ。
そう思った私は少しでも努力を見せようと、おもむろに両手を上げる。
「ん? ……レスリングのタックル?」
強張った顔をして両手を構えれば、そう捉えられても仕方がない。
しかしここで負けるな、私。
自分に気合いを入れた私は、眉間に皺を寄せ、顔を引きつらせてニチャア……と笑い、両手の親指と人差し指で、小さく指ハートをした。
「かわ……っ!!」
涼さんはすかさずデニムのポケットからスマホを出し、連写してくる。
「も~! なんで俺の恋人はこんなに可愛いの!」
彼は撮ったばかりの写真を見てクネクネしているけれど、私は凶悪犯みたいな顔をしてしまっただろう事を思い、ズン……と落ち込んでいる。
(もっと可愛く笑えるように練習しなきゃ。口角上げ五十回セット辺りからかな……。いや、もしも涼さんに見られたら『顔が引きつってる。病気!?』って心配される)
「はぁ……」と溜め息をついていた時、涼さんが「ねぇねぇ、どう?」とスマホの画面を見せてきた。
どこぞのブランドの商品ページで、全身にミラクルフィットしたタイトワンピースの写真だ。
「こんなん、全身タイツと変わらないじゃないですか。プロポーションにそんなに自信ないので無理です」
「ヒラヒラ系……? タイト……。ミニスカ……。レザー。……いや、デニムスーツ?」
涼さんはサッサッと画面をスクロールしつつ、チラチラと私の顔と画面を見比べる。
「レザーは殺生的に良くないからやめましょう。あとデニムもNGです」
「恵ちゃん、俺の家に法事に来るの? 数珠つけて挨拶に来たら、さすがにうちの家族もぶっ飛ぶよ?」
「仏壇があるなら手を合わせたいですけど、ご挨拶にレザーはないでしょう」
溜め息をつくと、涼さんは「そっかー」と言ってさらに画面をスクロールさせる。
「ちなみに恵ちゃん、好きなブランドってある?」
「分かって聞いてるでしょう。全然っす。というか、知らないし興味ないっす」
「俺が方向性を決めてもいい? 二人バラバラのブランドを着るより、同じブランドで統一したほうが仲良し感を出せるし」
「女子か」
「ああん」
スパッと突っ込みを入れたのに、涼さんは嬉しそうな声を上げる。
「……まぁ、任せますよ。こういうのは涼さんのほうが詳しいでしょうし、大まかな方向性が決まったら、どの服にするかぐらいは決めさせてくれるんですよね? 涼さんはセンスがいいから、丸投げでもいいんですけど」
「勿論だよ! 言うなれば、夕食何にしようか? って相談してて、俺が『肉系がいいかな~?』って鉄板焼きのお店に連れて行って、そこでステーキを頼むかハンバーグにするかは、恵ちゃんが自由に決められるんだよ」
「あ、分かりやすいっす。じゃあ、デ……、デート……、する日程が決まったら教えてください」
「オッケー!」
涼さんは片手でOKサインをして、顔に近づけて満面の笑みを浮かべて、某女性タレントの昔のポーズを真似る。
「古いっす」
私はそれに対してもスパッと突っ込みを入れ、思考を戻す。
「……嬉しい話をしてて、話題を切り替えて申し訳ないんですが、……私、朱里と会ってちゃんと話しますね」
「うん」
それまで冗談混じりに明るい話をしていたけれど、もとは会社で暴走してしまった私の反省会だった。
話を元に戻しても涼さんは不機嫌にならず、すんなり受け入れてくれた。
「俺としては、恵ちゃんのメンタル安定には、朱里ちゃんが必要不可欠と思ってる。だから君らが気まずくなったら、俺としても『何とかしないと』って思うしね。でも恵ちゃんが一人でも前に進めるなら、『いってらっしゃい』って送りだして、帰ってきたらまた話を聞くよ」
「……ありがとうございます」
ふざける時は「この人、本当に御曹司か?」って思うようなふざけ方をするけれど、基本的に涼さんはいい人で、とても大人だ。
だから私はこの人を無条件に信頼できるのだと思う。
「メッセージ送ります」
「うん」
私はポケットからスマホを出し、世界で一番綺麗で可愛い親友を想いつつ、メッセージを打っていった。
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