想いと共に花と散る
序章
 
「てめぇは、そのままでいてくれ」

 大きな桜の木の下で、貴方は傷だらけの手で私の頬に触れた。
 
「変わりませんよ、私は」

 変わらない人なんていない。人はいつか成長して変わる。
 生を受け、いつかは死を迎える。

 まるで春が終わって散る桜の花のように。

「今のてめぇは、いい顔してるよ」

 そう言った貴方は、柄にもなく屈託のない笑顔を浮かべた。
 
 もし、ありのままの私のことを見てくれる人がいたならば。
 貴方達に出会うことはなかったのだろうか。
< 1 / 267 >

この作品をシェア

pagetop