想いと共に花と散る
 そんな彼の前に座った雪は、縋り付くように目を細めて彼を見た。

「私の知らない所で死んだりなんか」

 いっそのこと、呪われてほしいと思った。
 雪の言葉に呪われて、縛られて、死ねずに生き残ってしまうのなら、それがいいと思ってしまった。
 これ以上知っている人が死ぬのは御免だという気持ちもある。
 けれど、それよりも土方には死んでほしくなかった。ずっと、隣にいさせてほしいのだ。

「私、何も言えなかった。誰にも何も言えなくて……皆、死んじゃった」

 己の強さが何であるのか教えてくれた人は、時代の流れと教えた強さに負けてしまった。 
 時代が彼を置いていってしまったのだ。もっと彼に寄り添えていれば、今でも共に強さとは何なのか追い求められたかもしれない。
 しかし、それを許さないのもまた時代だ。
 規則を破れば罰を受けて罪を償わねばならない。誰よりも強さに拘った人は、強さに殺された。
 迷いながらも自分の選んだ道に進んだ人は、その先にある正義に飲み込まれた。
 空に満開の花火が広がる時、何よりも伝えたかった言葉を伝えることに躊躇してしまったのだ。
 もっと近くによって聞こえるように言っていれば、目を見て言っていれば、今も手を引いて笑ってくれていたことだろう。
 それでも、伝わらないまま終わったしまったのが現実。
 彼は伝えようとせず、雪は聞こえないフリをした。

「いつもそう。いつも、後になって後悔する」
「端から後悔するって分かって生きれる人なんざ、この世にいるか」
「していい後悔と、しちゃ駄目な後悔ってあると思うんです。私がするのは、しちゃ駄目な後悔」

 どんな後悔も、元を辿れば結局は雪の行動一つで生まれていることばかりだった。
 違和感から目を逸らし、気の所為だと聞き返さず、突き放し、誤魔化した。
 その結果、何も言えないまま彼らは遠くへと行ってしまったのだ。

「たくさん心配してくれたのに、私は山南さんの苦しみに気づけなかった。本当は気持ちを伝えてくれてたのに、平助君がそんな事言うわけがないって突き放しちゃった。……甘えたら笑って甘やかしてくれたのに、井上さんに何も恩返しできなかった……。悪いのは、私だったのに……心配してくれた山崎さんに、酷いこと言っちゃった」

 恨まれたっておかしくないことを何度もしてきた。
 いっそのこと、恨んで呪ってくれたら楽だったかもしれない。
< 400 / 489 >

この作品をシェア

pagetop