想いと共に花と散る
 でも、そんなことをしない人達であることを知っているのは雪自身。
 いつだって彼らが最後の瞬間に雪に見せたのは、不器用な優しさだったのだ。

「謝りたい、謝りたいのに……謝れないのが嫌」

 また、抱き締めてくれた。これで何回目だろう。
 何も言わずに、ただ離れないように抱き締めるだけ。それだけなのに、簡単に涙腺は緩んでしまって。

「……謝れない自分が、嫌いっ………」

 自分はどうしてこの時代に来たのだろう。何のために彼らに出会ったのだろう。
 今生きている理由は、生まれてきた意味は、失わなければならないのは何なのか、答えは未だに見つからない。
 それなのに、ずっと目に見えない答えに振り回される。もう、うんざりだ。

「その言葉、俺以外に聞かれなくてよかったと思え」
「………うぅ……ぐずっ……」
「近藤さんが、てめぇの親父が聞けば白目向いて倒れるだろうな。山南さんは眼鏡を落とすだろうし、平助はこの世の終わりくらい落ち込む。源さんは呆れて、山崎はてめぇじゃなくて俺にキレてくるだろうよ」

 冗談のはずなのに、やけに鮮明にその様子が想像できた。
 皆、雪のことは責めようとしない。
 その言葉を聞いて、呆れた後に笑って無かったことにする。彼らはそんな人達だ。
 雪の知る彼らは、いつだって雪の前では笑っていたから。

「そんで、あいつ等はてめぇに言うんだ。“笑え”ってな」

 笑え。そんな言葉で解決できるわけがないのに、土方の言葉なら解決できる気がした。

『俺はね、君が君らしく笑っている瞬間が好きなんだ。見ているこっちも、笑えるから』

 知らないはずなのに、よく知る人の声で再生されたその言葉。
 ずっと昔、長い夢を見ていた時があった。その夢を見ていた時、断片的に聞こえてくる声があったのだ。

「俺がその結い紐をやったのはな」

 土方に負けじと劣らない雪の髪を撫でながら、土方は昔話を語るように言う。

「商店で見た瞬間、てめぇの姿が思い浮かんだからなんだ。やけに身につけている様が想像できてよ」
「……そう、なの?」
「我ながら恥ずかしいことだが。周りに置いてあったどんな簪よりも、その結い紐が一番似合う。そう思ったんだ」

 偶然とは思えなくて、彼らの中で打ち合わせでもしていたのかと思うくらいできていた。
 先に手にしたのは、沖田と藤堂と呉服屋で買った桜色の着物。
 そして、会津公都の顔合わせの後に贈られたのが桜色の結い紐。偶然と言うには、やけにできている。
 だが、それは偶然などではなく、運命がそうさせたのだ。
 何故なら、彼らは桜の如く咲き乱れて、やがて散る桜のような存在だから。
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