想いと共に花と散る
「雪。てめぇは、雪に埋もれる華でいるにゃもったいねぇ」
「……うぇ?」
「周りに咲くどんな華よりも、美しいっつってんだ。降り注ぐ雪すらも引き立て役にして、堂々とするべきじゃねぇか」
あんまりにも文学的な言い回しをするから、彼が何を言おうとしているのか全然理解できなかった。
腕の中で戸惑う雪をよそに、土方は少し照れが現れた声で続ける。
「まあ、なんだ。どんな格好してようが、俺はてめぇが隣で笑ってる明日を見たいんだよ」
目の前の霧が晴れたように、ぼやけていた視界がはっきりとした輪郭を得た。
どくん、どくんという規則的な心音が心地よい。
少し身動きをすると、その心音は一度大きく脈打った。
「その明日に……土方さんはいる?」
「いねぇと見れねぇだろうが」
「……ふふっ、それもそうだね」
強張っていた身体から力を抜くと、土方が優しく抱きとめてくれた。
その優しさに甘えて、雪は土方の身体に身を委ねる。
「次に行くのは、何処でしたっけ」
「蝦夷。こっかから遠く離れた、北の大地だ」
「そこは、こことは比べ物にならないほど雪が降るんですよね」
「ああ、そうだな」
白銀の世界というやつだ。何処を見ても一面真っ白で、空からはしんしんと雪が降り注ぐ。
きっと、天国と勘違いしてしまうほど美しい世界が広がっているのだろう。
そんな世界の真ん中で、土方の隣に立てる未来。共に笑える未来。
想像するだけでも、胸の奥が熱くなっていくのを感じた。
「絶対に、絶対に……一緒に行きましょうね」
「行くまでにはぐれんなよ」
「土方さんこそ」
ずっと、こうしてもらえる時間を望んでいたのかもしれない。
ただ、抱き締められているだけ。それだけなのに、こんなにも幸せで。
土方はずっと見てくれている。ずっと自分だけを見てくれている。
否、もっとずっと前から見てくれていた。目は逸らすことがあっても、心ではいつも見てくれていたのだ。
いつだって、目を逸らしていたのは雪の方で。気づきたくないと逃げ回っていたのは雪の方で。
(……気づきたくなかったのになぁ)
この想いに気づいてしまった今、もう離れられるはずがなかった。
背中に手を回せば、より強く抱き締めてくれる。
今夜は、雪の人生で一番人の温もりを感じた夜だった。