想いと共に花と散る
許せない。そんなの許していいはずがない。
だって、自分は彼が指揮官になるよりもずっとずっと前から一緒にいるのだ。
それも浪士組の頃からだ。御所の警護に参加したし、組織が新撰組と名を改める瞬間にも立ち会った。
そんな雪を差し置いて「歳三さん」なんて言っていいはずがないだろう。
「結城君。今、どんな気持ちだい?」
「心底腹が立っています!」
「それが何という感情か分かるかい?」
怒りなのではないのか。そう応えようとしたのに、雪の中にはっきりとした違和感が生まれた。
確かに苛立っているのに、腸が煮えくり返りそうなのに、ただの怒りとは違う気がした。
「教えてあげようか?」
大鳥の不敵な笑みが雪に向けられた。彼を見下ろす雪の目には微かな恐怖と好奇心が滲む。
カップをソーサーの上に置いた大鳥は、足を組んで椅子の背もたれに深く腰掛けた。
彼が口を開くのと、雪の喉が鳴ったのはほぼ同時であった。
「―――……恋だ」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
「……へっ?」
「まあ」
待て、待ってくれ。つねよ、口元に手を当てて可愛らしく驚くな。
恋? 恋だって? こい、コイ、鯉、濃い、故意。恋?
「君が感じるその怒りは、恋による嫉妬だ」
「あらぁ、あらあら、青春じゃない」
身体から力が抜けていき、雪は崩れるように椅子に座る。
両頬に手を当て俯くと、みるみる内に顔が赤く染まっていくのを掌から体温で感じた。
ずっと気づかずにいたのに、今この瞬間、完全に理解してしまった。
「……違うと、思います」
「いいや、違わない」
「私は小姓であって、そういう……そういうのでは」
「んもう! 素直にならなきゃ駄目よ。そういう時は、押して押して押しまくるの!」
完全に話しについていけない。楽しそうに笑うつねを見ていると、余計に頭の中が爆発しそうになる。
何が押して押して押しまくるだ。何を押せと言っているんだよこの人は。
分かった。つねは小夜に似ているのだ。真逆の性格をしているようでいて、意外と活発、押しの強いところがよく似ている。
「つねさんの言う通り。今の結城君は素直になるべきだ。お琴さんに負けたくないならね」
まだ手を付けていない自身の分のカステラを雪へと差し出しながら、大鳥はにやりと口角を上げて笑った。
「そうと決まれば、作戦を立てなくちゃね!」
「な、何の作戦ですか?」
「結城君、『お琴さんに勝って素直になろう作戦』だ」
というわけで、わけの分からない作戦が作られてしまったのだった。
だって、自分は彼が指揮官になるよりもずっとずっと前から一緒にいるのだ。
それも浪士組の頃からだ。御所の警護に参加したし、組織が新撰組と名を改める瞬間にも立ち会った。
そんな雪を差し置いて「歳三さん」なんて言っていいはずがないだろう。
「結城君。今、どんな気持ちだい?」
「心底腹が立っています!」
「それが何という感情か分かるかい?」
怒りなのではないのか。そう応えようとしたのに、雪の中にはっきりとした違和感が生まれた。
確かに苛立っているのに、腸が煮えくり返りそうなのに、ただの怒りとは違う気がした。
「教えてあげようか?」
大鳥の不敵な笑みが雪に向けられた。彼を見下ろす雪の目には微かな恐怖と好奇心が滲む。
カップをソーサーの上に置いた大鳥は、足を組んで椅子の背もたれに深く腰掛けた。
彼が口を開くのと、雪の喉が鳴ったのはほぼ同時であった。
「―――……恋だ」
何を言われたのか、一瞬理解できなかった。
「……へっ?」
「まあ」
待て、待ってくれ。つねよ、口元に手を当てて可愛らしく驚くな。
恋? 恋だって? こい、コイ、鯉、濃い、故意。恋?
「君が感じるその怒りは、恋による嫉妬だ」
「あらぁ、あらあら、青春じゃない」
身体から力が抜けていき、雪は崩れるように椅子に座る。
両頬に手を当て俯くと、みるみる内に顔が赤く染まっていくのを掌から体温で感じた。
ずっと気づかずにいたのに、今この瞬間、完全に理解してしまった。
「……違うと、思います」
「いいや、違わない」
「私は小姓であって、そういう……そういうのでは」
「んもう! 素直にならなきゃ駄目よ。そういう時は、押して押して押しまくるの!」
完全に話しについていけない。楽しそうに笑うつねを見ていると、余計に頭の中が爆発しそうになる。
何が押して押して押しまくるだ。何を押せと言っているんだよこの人は。
分かった。つねは小夜に似ているのだ。真逆の性格をしているようでいて、意外と活発、押しの強いところがよく似ている。
「つねさんの言う通り。今の結城君は素直になるべきだ。お琴さんに負けたくないならね」
まだ手を付けていない自身の分のカステラを雪へと差し出しながら、大鳥はにやりと口角を上げて笑った。
「そうと決まれば、作戦を立てなくちゃね!」
「な、何の作戦ですか?」
「結城君、『お琴さんに勝って素直になろう作戦』だ」
というわけで、わけの分からない作戦が作られてしまったのだった。