想いと共に花と散る
 雪の失言によってあらぬ称号を与えられたわけだが、二人が適当に納得したことで話はここで終わった。
 つねが紅茶を入れてくれ、三人は束の間の団らんの時間を過ごす。
 
「それで、一体土方君と何があったんだい?」
「ごふっ……っ! っ、い、いきなり聞くんですね」
「何ももったいぶるような話でもないだろう。大方予想はできるし、ねぇつねさん」
「そうねぇ。若いっていいわぁ」

 口に含んでいた紅茶を危うく吹き出すところだった。噎せ返る雪を見て、大鳥とつねは楽しげに笑う。

「……笑いませんか?」
「笑えるような話なのかい?」
「ち、違います……っ!」
「ならば笑わないよ」

 だから早く話せ。そう言わんばかりに、大鳥はカップを片手に貼り付けた笑みを浮かべた。
 斜め前に座っているつねも柔らかい微笑みを浮かべる。彼女の場合、何も考えていなさそうな笑顔だが。

「分からないんです。土方さんって人が」
「どういう意味だい?」
「歓迎会の時は女の人達に囲まれていい顔してたのに、さっき部屋の来てた女の人の前では嫌そうな顔をして」
「部屋に来てた、女の人……?」

 どういうわけか、大鳥とつねは雪の話の中でその部分に意識を奪われたようだった。
 茶を持って行ったら、部屋の中で土方に馴れ馴れしくしていた見知らぬ女。土方曰く、この洋館の主の娘らしいが、土方に一体何の用があって部屋にいたのか理解できなかったのだ。

「もしかして、お琴さんのことかしら」
「お琴さん?」
「この洋館のご主人、鷹宮様の娘さんよ」

 土方の話は本当だったらしい。適当な理由をつけて雪を女から離れさせようとしたのかと思ったが、そういうわけではなかったらしい。

「お琴さんかぁ……そりゃぁ厄介だな」
「何が厄介なんです?」

 一口大に切ったカステラを口に運ぶ手を止め、雪はすぐさま問い返す。
 カップに煎れられた紅茶を飲んだ大鳥は、何処か気まずそうに目を逸らして言った。

「男好きで有名なんだ。お琴さんは」
「土方さんは無骨だけれど綺麗なお顔をしていらっしゃるから、きっと気に入られてしまったのねぇ」

 二人はそう言いながら、うんうんと頷いて納得した。
 ポロッと雪の持つフォークからカステラが落ちる。雪は口を開けたまま、しばし理解に苦しんだ。
 男好き? 気に入られた? 綺麗なお顔?

「……はあ!?」
「おおっと、びっくり。そんな大きな声を出せるんだね」

 テーブルに手を付いて立ち上がり、礼儀も作法も関係なく雪は叫んだ。
 
「いや、いやいやいや! おかしい! そんなのおかしい!」

 おかしい。おかしすぎる。
 何が洋館の主の娘だ。結局は他人だろう。
 それが誰の許可を得て、無骨で意地悪で俺様な指揮官様に近づくというのだ。
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