冷徹国王の愛娘は本好きの転生幼女~この世の本すべてをインプットできる特別な力で大好きなパパと国を救います!~2

第一章 これがいつもの日常ですが?

 レオンティーヌはエールトマンス国の王女で、まだ三歳である。しかし、侮ってはいけない。彼女は二十六歳の日本人だったという前世の記憶を持っているだけでなく、本を開けただけで一冊丸ごとインプットできる特殊スキルの持ち主なのだ。

 朝、レオンティーヌが目覚めると、ぼーっとしたまま、右腕の袖をまくる。そしてとあるものを確認した。
 それは右腕にある王族の証の王紋と、魔法属性の有無を示す印である模様だ。生まれた頃はこの二つの模様が薄く、『お印薄く、無属性』と陰口を言われ、そのせいで国王陛下から放置されているなどと言われたこともあった。実際にはテオドルスの愛情はあったのだが。
 その二つの証は、テオドルスからの愛情を感じ取ることができて、その愛でレオンティーヌが自信をつけていくと、どんどん濃くなっていった。
 初めは毎日濃くなっていくのが嬉(うれ)しかったけれど、ある時から、再び薄くなるのではという不安がよぎるようになった。それ以来、朝起きるとつい確かめてしまうのだ。
(うん、今日もしっかりある)
 安心し体を起こすと、レオンティーヌは大きなベッドにポツンと寝ていたことに気がついた。
 といっても、一人で寝ているのではなく、大好きな父のテオドルスと一緒に寝ている。娘を溺愛しているテオドルスは毎晩レオンティーヌと添い寝をするが、彼女がすっかり寝入るとベッドの隅まで移動して寝るのだ。寝返りして小さな娘を押し潰してしまうのではないかと、心配でしょうがないらしい。
 レオンティーヌはため息をついて、小言を漏らす。
「また、しょんな端で寝て……。わたしは大丈夫なのに」
 テオドルスのそばに行き、父の顔をまじまじと眺めた。
 世間では、戦のあとに血みどろで眉間にシワを寄せて凱旋したことで、すっかり怖いと言われているのだが、実際には娘を溺愛する子煩悩パパだ。
 よく見ると金髪で端整な顔立ちの、いわゆるイケオジと呼ばれるタイプなのだ。夜会に出席すれば、その香りだけで女性が寄ってくるらしい。現在三十一歳男盛りなのだが、亡くなった王妃一筋で浮いた噂が一つもない。だが、レオンティーヌにとっては、それが嬉しい。
 自慢の父のほっぺをこすると、それまで固く閉じていたテオドルスの瞳がクワッと開き驚いた。
「ひえ! お、おとーしゃま、いつから起きていたんでしゅか?」
 オカルトのようなその動きに、レオンティーヌの心臓はバクバクしている。
「レオンティーヌが起きる少し前に目が覚めたが、もぞもぞしだしたレオンティーヌが可愛くて、つい寝たふりをしてしまったのだ」
 得意げに語ってますが、狸寝入りが長くないですか?と、胸元を押さえ不満顔になる。
「じゃあ、もっとゆっくり目を開けてくだしゃいよ。いきなりのまぶた全開は、心臓に悪いでしゅ」
 ちょっとした文句だったのに、テオドルスがしゅんとして謝ってきた。
「すまない……。可愛い娘がどんな顔で頬を撫でているのか、見逃してはもったいないと目を勢いよく開けてしまったのだ……」
 ちょっとばかり愛が重いが、これもいつものことなので、レオンティーヌは慣れている。
「顔を見たいという気持ちはわかりましゅ。わたしもおとーしゃまのお顔を見ているのは大しゅきだもん」
「レ、レオンティーヌ!」
 テオドルスに抱きしめられて、ほっぺすりすりなど大げさな愛情表現を一身に受ける。これもいつものことだ。
 そのあと、朝食を終えたテオドルスが、宰相のベルンハルトに引っ張られて、泣く泣く仕事に向かう。これはレオンティーヌにとって日々の見慣れた光景のはずだが、いつも以上にテオドルスが名残惜しそうにしている。
「今日は早く帰りたかったのだが、ハンネスが夕食の準備を終えたあと、小麦の輸入に関することで、彼と話し合いをしなければならないんだ。少し遅くなるが夕食時には絶対に帰ってくるよ」
「はーい、おとーしゃまが帰ってくるまで食べじゅに待ってましゅ!」
 レオンティーヌの声に、ようやくテオドルスは出かけたのだった。
 一方のレオンティーヌは、聖獣の飼育施設に足を運ぶ。そして、フェンリルのフウさんとインフェルノドラゴンのルノさんと、王宮内を散歩するのが日課なのである。
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