これを恋と呼んでもいいですか?
一話
一話

〇回想

斎藤聖20歳は両親を事故で亡くし、祖母宅から大学へ進学していたが、祖母が施設に入ることになり一人暮らしを考えていた。
祖母『大丈夫かい?一人でやっていけるかい?』
聖『もちろんだよ。大学生なんだからもう大人だし、一人で大丈夫。でもちょっと寂しいかも』
幼い頃から祖母と暮らしていた聖は涙を浮かべながらも祖母に心配させないように無理やり笑った。


〇街中

聖「はぁ…住み込みのバイトってなかなかないよね。学費は奨学金とバイトで何とかなっても一人暮らしの費用は流石に…」

肩を落としながら、仕事を探す聖。
ベンチを見つけ座り込む。
スマートフォンで検索するのは住み込みで働くことが出来る求人。
なかなかヒットしなかったが、溜息を溢していると視線を感じ顔を上げる。視線の先には、見知った顔。

聖「えっと…あ!向上さん?」
向上「やぁ。どうかした?こんなところで浮かない顔してたからさ」

スーツ姿で聖の前に現れたのは、カフェの常連客である向上だった。
向上とは他愛のない会話をする仲で、若くして企業してIT企業社長として雑誌にも乗っている人物らしい。
(聖は詳しくは知らない)

聖「実は住み込みのバイトを探していまして…でも、なかなかないんですよ。あ!あった!」
向上「ちょっとちょっと。これは君が働けるような場所じゃないよ」

スマホを覗き込み、あった!と興奮気味になる聖の画面をみてそれを取り上げる向上。
(性的な店)

世間知らずだが、真っ直ぐで明るい聖を見て向上はあることを思いつく。

向上「あれ?聖ちゃんって、年齢は二十歳超えてるよね?」
聖「はい、ちょうど二十歳です」
向上「オッケー、良かった。俺の知り合いが家政婦探してるんだよ。君がベストだね」
聖「本当ですか?!」

立ち上がり目を輝かせる聖。

向上「うん、多分君だったら大丈夫だと思う」

意味深な顔をする向上だが、聖はとにかく早く仕事を見つけたい一心で頷いた。



〇二週間後 高級マンション前

聖は天に届きそうなほど高いビルを見上げながら、目を白黒させる。

聖「えっと…私、ここで…働くんですよね?」
向上「そうだよ。俺の友人だから素性は問題ないけど、雇い主はちょっと”問題あり”かもね。でも、聖ちゃんなら大丈夫」

聖はボストンバッグを片手に不安そうに向上を見る。

向上「でもそうだなぁ。聖ちゃんは…人を信用しすぎなんだよね。俺が悪人だったら大変なことになってたかもしれない」
聖「え?!でも…向上さんはいい人だってわかるから…」
向上「…そこが君のいいところではあるんだけど」

向上と聖は高級マンションの中に足を進める。
みたことのない広いエントランス、コンシェルジュも24時間在中しており、聖はここに住むような人のもとで
働くことに不安を加速させる。

聖(大丈夫かな…。私、こんなところで働いて大丈夫かな?ていうか、雇い主は普通の人じゃない…よね?)

向上のことを完全に信用していた分、ここへきて自分の世間知らずな面が露呈する。


最上階に到着してインターフォンを押す向上の隣でドキドキしながらドアが開くのを待つ。
すっとドアが開き、顔を覗かせたのは端正な顔をした男だった。


ドアの正面に立つ聖はあまりにも美しいその男に見惚れてしまうが、すぐに顔を強張らせる。

聖「…男性?えっと…女性じゃ…」
向上「あれ?言ってなかったっけ?男だよ。でも問題ないよ。こいつは俺の親友で良く知ってるけど本当に女に興味がないんだ。興味がないというより…嫌いの方が正しいけど」
聖(どういうこと?!雇い主が男でしかもこんな高級マンションに住んでいるなんて聞いてない!)

自分の世間知らずさや、事前に詳細を訊かなかったことを深く後悔した。

挨拶をする前に聖も男も嫌そうな顔をしている。


雇い主は久東グループ副社長の久東帆高

帆高「帰ってくれ。俺は女だなんて聞いてない」
向上「まぁまぁ。お前は誰を雇っても続かないんだから俺の言う通りにしてみた方がいいんだって。それに仕事も忙しいんだろ?家のことやってくれる人は必要だ」

聖(絶対雇ってくれるわけないし、本当に嫌そう…。私、これからどうしよう)

ちょうど祖母の自宅を引き払い、宿なしだった。

絶望する聖の様子を見て、帆高は腕を組み考える。

帆高「若いけど、何歳?」
聖「あ、えっと…二十歳です。大学生です」

帆高は盛大に溜息を溢す。


向上「訳ありなんだよ。この子、家もないし、家族も施設にいる祖母しかいないんだよ。苦学生で大変みたいだからさ。それに俺は人を見る目はあるんだよ。それは知ってるだろ?」
帆高「……」
向上「とりあえず次の家とか、住み込みで働けるバイトとか探せるまで家に置いてやってよ」
聖「あの!ご挨拶遅れましたが、斎藤聖と言います。家事は得意です!プライベートなことは一切聞きません。雇っていただけないでしょうか。期限付きで構いません」

聖は頭を下げた。
住む場所もない聖は必死にならざるを得なかった。

相手は男性だが、女性が嫌いだという向上の言うことは間違ってないと思った。

帆高「分かった。その代わり、一か月だけだ。その間に他の仕事探してくれ。俺のプライベートには一切口を挟まない、これも条件だ」

聖は顔を明るくして頷く。

聖「はい!!ありがとうございます」


向上が隣で笑っている。




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