一大決心して大学院に進学したら、なぜか指導教官の外科医に溺愛されてます
部屋に入ると、重たいドアが閉まる音がした。
その瞬間、身体ごと壁に押し付けられ、激しいキスをされた。
唇を食むような、呼吸さえ奪う強引な口づけ。
ただでさえ酔ってぼんやりしている頭が、余計に霧がかっていく。
アルコールと、雨と、先生の香水の匂いが混じり合って、思考が溶けていくようだ。
「……んっ、……先生? せめて、シャワー……」
合間を縫って喘ぐように訴えると、耳元で低く囁かれた。
「……ここまで来て『先生』はやめろ」
首筋に熱い唇が落ちる。
ぞくり、と背筋が震えた。
拒否できない。でも、確認しなければいけない。
これがただの、一夜限りの過ちなのかどうかを。
「……でも、今日だけ──なんですよね?」
私の問いに、先生の動きが一瞬止まる。
至近距離で、熱っぽい瞳が私を捉えた。
「……それは、お前次第だろう」
試すような、あるいは突き放すような言葉。
私は自嘲気味に笑った。
「……何だ。セフレにならないかってこと、ですか」
先生は否定しない。ただ、私の反応を待っている。
私は力の入らない手で、先生のシャツの襟を掴んだ。
「……嫌だなぁ……」
私は面倒そうに、けれど本音を吐き出すように呟く。
「私、先生みたいな人とセフレになったところで……
絶対にいつか、本気になってしまう」
ただの都合のいい女でいられる自信なんてない。
だって、もうとっくに惹かれているのだから。
……こんな綺麗な顔して、それでいて医師として日々人の命を救っていて。惹かれないほうがきっと変だ。
身体を重ねてしまえば、きっと引き返せなくなる。
「身体だけじゃなくて……心が欲しいと思ってしまうから」
私の弱音を聞いた先生は、ふっと目を細めた。
そして、私の腰を強く引き寄せると、逃げ場のない瞳で告げた。
「……いいよ」
「え……」
「欲しがれよ」
先生は私の唇を親指でなぞる。
「全部やる。
……だから、俺以外を見るな」
その傲慢で、甘美な命令に、私の理性は完全に白旗を揚げた。
もう、心も身体も、この男には勝てない。
私は観念して瞳を閉じ、再び降りてきた唇を受け入れた。