一大決心して大学院に進学したら、なぜか指導教官の外科医に溺愛されてます
そして、ふと胸に去来した想いを、私は口にした。
「それと……」
「ん?」
「……共著の論文も、いつか出せるといいですね」
それは、私のささやかな、けれど一番の憧れだった。
ファーストオーサーが彼で、セカンドが私。
あるいはその逆でもいい。
世界のどこかのジャーナルに、二人の名前が並んで刻まれること。
それが、私たちにとっての最高の「記念日」になると信じていたから。
坂上先生は一瞬きょとんとして、それから今日一番の優しい顔で笑った。
「……当たり前だろう」
彼は私の頭を、ポンと乱暴に撫でた。
「俺とお前が組むんだぞ? インパクトファクター10点越えは確実だな」
「ふふ、大きく出ましたね」
「言ったろ。俺は野心家なんだよ」
彼はニッと笑い、マイクロピペットを握り直した。
「……いつか必ず、並べような。俺たちの名前」
「はい!」
私は力強く頷いた。
その「いつか」は、そう遠くない未来に来ると信じて疑わなかった。