溺愛銃弾 〜メルティ・your・バレット~
そのまま鹿島さん達とエレベーターで上へ。名前を知らない運転手さんが荷物を持ってくれて、今はもう『若姐さん』じゃないのになんだか申し訳ない。

「これから行く店は昔からの知り合いでね、一花の誕生祝いも兼ねて招待してくれたんだよ」

抱っこした一花のほっぺにキスしながら、陶史郎さんの眼差しがやんわり弧を描く。

こっちへ来てからは、ふつうの家族みたいに陶史郎さんの運転で公園に行ったり、買い物したり。鹿島さんが車を出すことはないし、鹿島さんはなにも干渉しないし、だから今日が特別な気はしてた。

不出来すぎる奥さんだって烙印を押されないよう、しっかりしないと。緊張と不安がにじみ出てたのか、涼し気に笑まれた。

「大丈夫、沢崎も知ってる男だから」

そのひと言で肩から力が抜ける。そうなんだ。

思わず口許も緩んだら、黒いスーツの鹿島さんと視線がぶつかって気まずそうに逸らされる。はじめて目が合った。こっちを見ないひとじゃなかった。

エレベーターの扉が開いた。肩を張った後ろ姿がいつもと違って見えた。いつも玄関先で見送るその背中と。・・・なんとなく。
< 28 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop