甘々とロマンス中毒
「こんばんは」と、辿々しく挨拶をしてくれる菫花さんへ、私も「……こんばんは」と、ぎこちなく返す。

軽く会釈をする菫花さんは、大人の対応だ。いつまでもオロオロしてる私は子供である。

後退りするみたいに、私は菫花さんとの距離を半分空けて、だらんと下がった視線を上げたの。

菫花さんは投入口にお金を押し込んで、生牡蠣ベイビーのクレーンゲームを始めた。自然と流れで私は眺める。

小さなわかめは動かない。3回目にして。

———ガコンッ

ようやく持ち上がったけど、落下した。

「もう少しだったのに……」

次のプレイが始まってアームが左へ移動する。私の視線も追いかける。

「あっ。もう少し左です」

「!」

「…わ、ごめんなさい……。こーゆーの、ちょっとだけ得意なんです」

「!!ナルホド……」

恋のライバルにゆらゆらな私は、思わず口を挟んでしまった。菫花さんの困り果てた反応に気恥ずかしくなる。お喋りな口はチャックしたの。

黙り込み、クレーンゲームの行方を見やった。
掴んだ瞬間、ぽてん…。わかめは生牡蠣ベイビーの山に再び落ちてしまった。

「取れない…(“これ”も、もう諦めようかな)」

呟いた菫花さんは、コーラルピンクのリップを塗った唇を、ちょこんと尖らせる。


「(菫花さん、かわいいもの好きなんだ)」

そんなことをぼんやり思っていると、

「———今日はあやみくんも一緒なの?」

突如、話しを振られた。

「……ハイ」

「そ…そっか(…て、自分から聞いたくせに、なにしゅんとしてるんだろ)」


のに、会話が続かない。
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