年下研修医の極甘蜜愛


 ――完全に仕事モードの彩さんだ。


 研修医室は医局と隣接していて、スライドドアで仕切られている。ドアを閉めてしまえば、医局内の音はほぼ聞こえない。仁寿はドアが閉まらないようにロックして自分の席に腰を据え、研修医向けの医学雑誌を広げた。


「んん? 藤崎先生じゃない。どうしたの?」


 次に研修医室にやって来たのは、郵便物を手に持った医局秘書課課長の平良だった。オールバックに固められた白髪交じりの頭髪と人のよさそうな顔。ぽっこり膨らんだお腹がキュートな、四十代後半の男性だ。


「明日の研修医会で発表するポートフォリオを、篠田先生にチェックしてもらおうと思って来ました」

「ああ、そうか。竹内先生がケガで参加できなくなったからねぇ」

「はい」

「救急の研修は順調?」

「今のところは」

「頑張ってよ、藤崎先生。みんな、先生たちが院外研修から帰って来るのを楽しみに待ってるからね。出張も大変だと思うけど、よろしく頼むよ!」

「ありがとうございます。頑張ります」


 平良は、製薬会社からの封書を仁寿に手渡して研修医室を出ていった。それからしばらくは静かだったが、救急車のサイレンが聞こえてから急に医局内が騒がしくなった。内線はひっきりなしに鳴るし、外来や病棟の看護師長が出たり入ったり。医局には平良と彩しかいないから、日常業務と対応に追われて大変そうだ。

 あらかじめ救急車の受け入れ要請があったらきつい状況だと聞いていた仁寿は、雑誌を片づけてコーヒーカップを洗うと、内線を切ったばかりの彩に声をかけた。
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