年下研修医の極甘蜜愛

 仁寿が一階の点滴室に直行すると、ベッドが十台並んだ点滴室は満員で、外来の看護師が二人で患者の対応にあたっている状況だった。どうやら、医師だけではなく、今日は看護師も体制がよくないらしい。


「お疲れ様です。ルートが取れない患者さん、どの人ですか?」


 院外研修に出ているはずの仁寿が突然あらわれたので、看護師たちは面食らった様子だったが、それにかまわず近くの電子カルテにログインして、看護師が読みあげる患者番号を打ち込む。カルテの記録を順に追い、仁寿は患者のもとへ急いだ。


「青木さん、ちょっと触りますね」


 仁寿が声をかけると、患者は仰向けの姿勢でとろんとした目を向けて、「うるせぇ」と呂律のまわっていない声と手を振りあげた。体に力が入らないのか、猫パンチほどの威力もない。それをかわして患者のズボンの裾をまくる。足が、目視で容易に分かるほどぱんぱんにむくんでいた。


「青木さん、心臓の病気をお持ちですか?」

「はぁ?」


 酩酊状態だから、本人に聞いてもだめか。仁寿は一度その場を離れて、青木を診察した茅場にPHSで内線をかける。


「研修医の藤崎です。……あ、はい。ちょっと所用で。ええ、そうなんですよ。ありがとうございます。それで、先生が診た青木敬三さんについて相談があります。……そうです。六十七歳の……、はい、その方です。カルテを見たら点滴のオーダーしかないので、採血と胸写を出してもいいですか? 浮腫が著明で、補液いく前に採血したほうが……」


 PHSを耳と左肩で挟んで、茅場と話しながらキーボードを叩いてカルテに記録を書いていく。


「ああ、そうなんですね。それなら、僕がそれぞれ検査の指示を出しておきます。……いいえ。こちらこそすみません、診察中にお電話して。お手数ですが、指示の確認だけお願いします」


 茅場と仁寿の話が終わると、看護師の一人が隣で採血の準備を始めた。
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