年下研修医の極甘蜜愛
未来に向かって
出張から、二週間が過ぎようという金曜日。
時刻は午後七時半。
忘年会に出席する大学生やサラリーマンの群れ、クリスマスのイルミネーションの下で肩を寄せ合う恋人たち。世の中は明日から三連休とあって、繁華街は大いににぎわっている。
彩は、由香に誘われて、例の飲食店でマスターの手料理を御馳走になっていた。さびれた商店街の狭間にあるマスターの店は、世の雑踏から切り離されたように静かだ。マスターの料理が空腹を存分に満たし、暖色の間接照明と会話を妨げない音量の軽快なジャズが、一週間働き抜いた心を解きほぐしてくれる。
「ねぇ、彩」
和牛のステーキを赤ワインで流し込み、由香が彩に鋭い視線を向けた。
それまではいつものように、職場では口にできない仕事の話や明日の暮らしにはなんの役にも立たない世間話で笑っていたのに、一体どうしたというのだろう。
彩が、クリームパスタをもぐもぐと咀嚼しながら「ん?」と目を大きくすると、由香が「藤崎君」と声を潜める。
どきっとした。
彩は、仁寿とのことを誰にも話していない。職場でそういう目を向けられるのは、仁寿のためによくないと考えたからだ。しかし、由香は姉妹のように育った幼馴染みで、心から信頼できる親友だ。だから、彩には由香に隠し事をするつもりは一切ないのだが、話を切り出すきっかけがなくて現在に至る。
「おととい、研修医会で藤崎君に会ったんだけどさ」
「う、うん」
「彼、すごく肌ツヤがよかった」