年下研修医の極甘蜜愛
なにもわたしを枕にしなくても。寝心地だってよくないのでは。そんな言葉が浮かんで、でも、と彩は口をつぐむ。朝から普通に仕事をしてそのまま当直に入るのだから、疲れているだろうし、今はいろいろ言わないほうがいいと思ったからだ。
「彩さんの顔を見たら、ほっとした」
太腿に頬をすりすりして仁寿が目を閉じる。はふ、と大きなあくびをして、仁寿はそのまま寝入ってしまった。ほのかに香るラベンダーは、先生の匂い。アロマみたいで癒される。
寝顔をまじまじと見てみると、かわいいと思っていた顔は鼻筋とかあごとかの骨格がしっかりしていて、しっかり大人の色気みたいなものがある。
ぴんと伸ばした背筋をソファーの背もたれに預けて、仁寿の頭が動かないようにもぞもぞと小さな動きでお尻の位置を調整する。それから仁寿が持ってきたコミックに手を伸ばした。それは十数年前、女子中高校生の間で大流行してアニメにもなった少女マンガだった。当時に買ったのだろうか。年季の入った黄ばんだ紙が年月を物語っている。
――なつかしい!
ぱらりと一巻の表紙をめくって、内心で歓喜の叫び声をあげる。中学生のころ、このマンガが大好きだった。友達と回し読みして、みんなで主人公とその彼氏の恋愛に一喜一憂したり憧れたり。とても楽しかった。
そうそう、ここで彼氏がかっこいいこと言ってきゅんとするのよ! ここ感動的なんだよね!
当時にタイムスリップしたかのように心の中で大はしゃぎして、泣きそうな顔をしたりニヤニヤしたりを繰り返す。読み進めてはページを戻り、彩は時間を贅沢に使ってマンガの世界を堪能する。
すっかり夢中になって、はっと腕時計を見ると一時間近くたっていた。仁寿が起きる気配はない。
「藤崎君」
彼が医学生だったころ、彩は仁寿をそう呼んだ。
「どうして、わたしなんかを好きなのよ」
虫の羽音のようにかすかな声で言って、彩の指先が仁寿の首筋に触れる。すると、もぞもぞと掛布団が動いて手首をつかまれた。