「こぶた」に婚活は難しい〜あなたの事なんて、狙ってませんから。〜

最悪の1人目（2）

「本日は婚活バスツアーにご参加頂き、誠にありがとうございますぅ。本日、皆様をサポート致します、佐々木と申します。」
スタッフの佐々木さんはうふふ、と可愛らしく笑った。
「そうですよね。皆様、まだ緊張していますよねぇ。でも、ご心配なく。皆様が1日楽しく過ごせる企画を沢山ご用意しています。また、多くの方とお話出来るようにお時間も取っていますので、ご安心下さいね。」
佐々木さんは慣れた感じで私達に説明していく。長い髪を緩く巻いていて、左右に顔を向けるたび、フワリと揺れる。優しいお姉さんという印象がぴったりの人だった。男性参加者の何人かは佐々木さんに魅了されているようだった。
佐々木さんはその後も諸注意をいくつか話した後、今日のツアーのコースの説明を始めた。
「まずは、品川水族館へご案内致します。ここではグループ行動で動いて頂きます。その後、商店街主催の食べ歩きツアーでお昼となります。この時間は自由行動となります。最後に公園に隣接したカフェを貸し切っておりますので、こちらでトーキングタイムとなり、カップリングタイムという流れになります。」

倫子は説明を聞いているうちに不安な気持ちがすっかり吹き飛んでしまった。今回このツアーを申し込んだ理由はもちろん婚活だが、このツアー内容も理由のひとつだった。今日行く商店街は雑誌にも載っていない穴場中の穴場で一部の人しか知らない食べ歩きスポットなのだ。今回は各店舗の“おすすめ”を少量ずつ食べられる企画が用意されていた。もちろん、各店舗での個人購入も可能らしい。商店街の各所に設置されたベンチやテーブル席で、食事が出来るらしい。
もう一つのカフェはブッフェ形式と聞いていて、アフタヌーンティーを楽しむらしい。

（ご飯が食べられて、彼氏が出来るかも知れないなんてサイコーじゃない？一万円は高かったけど人気のツアーらしいから、抽選に当たって良かったー）
倫子はこれから食べられる食事を思い浮かべてむふふとほくそ笑んだ。