天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 首を傾げた私に、教授は立ち上がり、鍵のかかった棚から一冊のファイルを取り出す。

「個人情報は伏せてあるが、その患者のカルテだ」

 私は一礼してから受け取り、ファイルを開いた。

「これは……」

 眉をひそめ、ペラペラとページをめくる。

 患者が患っているのは、自己免疫疾患のひとつ。
 それも世界に数十例しかない、希少なものだった。

 すぐさま命にかかわるようなものではないが、常に倦怠感があり、少し動けば発熱し、筋肉の一部に阻血が生じ鈍く痛み、同時に全身の関節も熱を孕み強く痛む。

 インフルエンザのような症状が常に出ていると言えばわかりやすいだろうか。

「この患者なんだが、仕事の継続を希望していてね」
「それは……まあ、そうですね。治療の会あってか炎症の程度はかなり低くなっていますし、長時間でなければ……」
「激務なんだ。それも、相当な」
「お勧めできません」

 はっきりと断言する。

「今はいいかもしれませんが、そんな悪化リスクを取るほどの仕事なのですか?」
「……そうなんだ」

 目を伏せる教授を見つつ、さてどんな仕事なのだろうと考える。病気であることを院内関係者にも秘密にせねばならないとなると……政治家か、有名スポーツ選手か、芸能人、そのあたりだろう。

 というのも、うちの病院はお忍びでそういった職業の方が入院することがあるのだ。
< 14 / 119 >

この作品をシェア

pagetop