天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 まあ、医師としてではなく理事のひとりとして、というところだろうか。

 なにしろ彼は御曹司なのだから、その“秘密の患者”に関しても噛んでいるのだろう。

「は、聞いていますよ。どうぞ、かけて」

 理事長は好々爺な微笑みを持って椅子を進める。

 この穏やかなおじいさんの孫にどうやったらこんな俺様な孫が生まれるのだ、と香月先生に目をやると、彼は不機嫌を隠しもしない表情をしていた。

 勧められるままに取り合えずサーブされたウーロン茶で緊張して乾き気味の唇を湿らせていると、園岡教授が案内されてくる。

「いやあ、すみません。患者の処置が少々」
「いやいや、患者第一、患者第一。全く問題ありませんよ」

 そう言って理事は笑い、「さて」と微笑む。

「吉武先生の、昨年の論文は読ませていただきました。実にいい着眼点で、治療法も堅実。わたしとしても、この件は吉武先生に……」
「俺は反対です」

 ずばっと口を挟んできたのは、香月先生だった。私はムッと眉を寄せる。

「お言葉ですが、香月先生。それを決めるのは患者様で……」
「俺が患者だ」



 私はぽかんと彼を見つめる。患者?


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