天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「まあ、そんなわけで、宗司には申し訳ないのだけれど、あちら陣営に弱みを握られないため、内密に治療してもらっているというわけだ」
「そうしようと言い出したのは俺だ」

 タブレットをスリープモードにし、教授に手渡した香月先生が淡々と言う。

「もともと、経営なんかには関わる気はなかった。だが、あんな蛇野郎と守銭奴の縁戚どもに病院を牛耳られるくらいなら、不承不承ではあるが、俺が跡を継ぐ」
「そういうことですか。それにしても、池崎先生が蛇野郎ってなんで……あ、爬虫類系イケメンだからか」

 亜香里の言葉を思い出し呟くと、香月先生は心底バカにしたような表情を私に向けてくる。

「イケメン? は、男の趣味まで悪いのか、お前は」
「あの、そういうわけでは」

 イケメンと思っているわけでも、ああいう人がタイプなわけでもなんでもないのだけれど。
 香月先生は「はー」とため息をつき、眉間を指で揉む。

「吉武が教授の後任として適格なのはよくわかりました」

 私は目を見開く。あの香月先生に論文が認められた……⁉

「ただ、一点。どうしても、どうしても俺のプライドにかけて承服しかねる懸念事項があります」
「なんでしょうか」

 答える私を、大変失礼なことに彼は指さした。

「治療を受ける際、体調を相談する際、ふたりでいるところを病院の内外で見られることが不満です。教授とふたりでいるところですら、一度妙な噂がたったことをお忘れですか」
「先生と教授にそんな噂が」

 私は目を瞬く。あまり院内の噂に詳しくないから知らなかった。

「万が一、俺とこいつが付き合っているとかいう噂が流れたらどうするんですか。うちの病院のスタッフがそういう噂を好むのはおふたりともご存じでしょう」
「ああ、まあそれは……って香月先生、失礼過ぎませんか」

 私は唇を尖らせる。

「私とちょっと噂されたって、いいじゃないですか」
「嫌だ。どうしてこんなガサツな女と噂されなきゃいけないんだ」

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