天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「あとで“同棲したらやっぱり結婚は無理だと思った”とか理由をつけて、婚約を解消してもらえれば」
「はあ、なるほど」
答えつつ、不服そうな香月先生を見る。まあこんな“俺様”だもの。私が耐えられなくなったという破棄理由はみな納得すると思う。
それにしても、この人はどれだけ辛い思いをして、どれほど強い意志で症状に耐え、どんなに厳しい覚悟で現場に立ち続けているんだろう、この人は。
後継者云々ではなく、ただひたすら、彼は人を救いたいのだ。
そのことは、研修医時代から知っていた。
休憩中だって自己研鑽を怠らない人だ。
「どうも、後継問題が本格化してから、症状が強く出ているような気がして。それさえ片付けば、少しは楽になるだろう。宗司は、自分勝手なやつだが、責任感が強い」
「はい」
私ははっきりと頷く。
責任感という言葉は、香月先生にしっくりと当てはまった。
「勝手なことを言わないでいただけますか、理事長」
少し冷静になったのか、香月先生の口調が丁寧に戻る。
「俺はそんなことでプレッシャーを感じてなどいません。断じて」
「お前がそれを知覚しているかどうかは関係ないのだよ、宗司。お前の身体が限界だと言っているんだ」
「限界? は、上等ですよ。乗り越えてやる」
ぎらりと瞳が光った。背中が粟だつ。
どうして、それほどの覚悟を……?
「そのためにも、吉武先生の助けがいるのじゃないのか」
「それは……だが、治療はいままでどおりで構わない。同居までする必要はない」
私に向けて彼は淡々と言う。ほんのちょっとだけ、本当に微かに、彼の瞳に心配の色が見え隠れしていた。
……私に気を使っている? 本当に? あの、俺様な香月先生が……?
ぽかんとしている私に、理事長がさらに言葉を続けた。