天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「失礼だが、吉武先生はうちが貸与型の奨学金を出しているね」
「え? あ、はい、お借りしています」
うちは超ド庶民なのだ。ホイホイと私立医大の学費を出してもらえるほど裕福ではなかったため、病院から“将来はこの病院で働くこと”を前提に奨学金を借りたのだ。
ちなみに、今もお給料からまとまった額を天引きで返済されている。さて、返済に何年かかるか……。
「もし、この話を受けてくれるならば、正当な報酬を払うだけでなく、残りの分全額、免除しよう」
「ほ、本当ですか」
自分でも目が輝いているのがわかる。香月先生はというと露骨に眉をしかめた。
「お前、それでいいのか。金のために自分を売るのか」
「そういうわけではないですが」
私は「うーん」と首を傾げた。なんて言えばいいだろう。
そもそも、奨学金の話が出る前から、私は香月先生との同居に心が傾いていた。
彼が好きだから、とかそういうのは一切ない。
ただ、患者を助けたいという彼の気持ちにシンパシーを感じるし、それがやれる彼を病気が縛り付けているのなら、取り除いてあげたい。
病気で苦しむ人がいれば助けたくなる。
それが医師という生き物だからだ。