天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
「それに、俺の元婚約者なんてポジションになったら恋愛しにくくなるぞ」
「いやまあ、職場恋愛する気はないので、別に……」
というか、ほとんどまともに男女交際なんてしたことないのだけど。
「理事長。いいですか、俺は今まで通りで十分です」
「だがなあ、孫が痛い思いをしているのを黙って見ているのは辛いんだ。この老体の身になってくれ、宗司」
「本人が平気だと言っているのに」
「香月先生」
私は彼の言葉を遮り、口を開いた。
「いつまでうだうだ言っているんですか?この病院ではあなたにしかできない手術もあるんです。あなたが健康でいることは患者さんの命にも直結するんですよ」
私の言葉に、香月先生は口を噤む。核心だったからだろう。彼ひとりの命と健康が、何人もの患者を救う。
「個人的には先生のことは苦手ですが、これも患者さんのためと思ってしばらく私と婚約者ごっこしましょ」
「……こいつ」
香月先生は引き攣った笑みを浮かべ、そのあとこれでもかと眉を強く強く寄せたあと、めちゃくちゃ不承不承が伝わる様子で、ほんのちょっとだけ首を縦に振った。