天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】
 私は手入れの行き届いた和風の門の格子の隙間から庭園を覗き込みながら呟いた。数寄屋門っていうんだっけ?

  崩し字の“香月”という表札を見ながらインターフォンを押すと、しばらくして『入れ』と香月先生の声がした。

「お邪魔します」

 おそるおそる、カラカラと格子戸をずらし中に入る。
 日本庭園によく似合うイロハモミジは、ゆっくりと色づき始めている。

 池には色とりどりの鯉が鰭を翻して……なにこれ、高級旅館みたい。

 飛び石の上でトランクを引くわけにもいかず、必死で抱えてえっちらおっちらと進む。
 私は女性としては背が高いから力も強いほうだけど、それでもやっぱり重いものは重い。

「香月先生。お邪魔いたします」

 玄関先で叫ぶ。
 ひんやりとした長い廊下が続いていた。
 その先から足音が聞こえ、現れたのはシンプルなトレーナーにチノパン姿の香月先生だった。

 セットされていない、無造作な髪型だというのに、やたらと決まって見える。彼は腕を組み、微かに眉をひそめた。

「どうした、肌寒いのに汗だくで。庭を生まれたての雛みたいにぶるぶる歩いていたのは見えていたが」
「見ていたなら手伝ってください」
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