天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 香月先生は鼻を鳴らし背を向け、来いと言わんばかりに手を揺らす。トランクをだだっぴろい土間に置いたまま、鞄だけ抱えて玄関に上がる。車輪を拭いていないから。

「こちらのスリッパは履いていいものでしょうか」

 廊下を歩く音だけが返ってきた。まあ、多分いいんだろうと判断してスリッパを履く。……一応用意はしていてくれたのね。
 それにしても広い。一体何部屋あるんだろうか。

「そっちが浴室。キッチンはあの先」

 適当な案内をされながらふたつ角を曲がった後、彼は立ち止まる。びっくりして背中にぶつかり、バランスを崩した。息を吞んだ瞬間、香月先生に抱き留められた。

 ドキッと心臓が大きく動く。
 彼の逞しい腕が私の身体を支えている。まるで抱きしめられているみたいに……。
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