天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

 彼の息遣いが、本当に近くで聞こえた。
 同時に「はあ」という面倒くさそうなため息も降ってくる。

「君、意外に鈍くさいんだな」
「そういうわけでは……」

 妙に焦りつつ彼から離れ、頭を下げた。なんでドキドキしているんだろう。

「ありがとうございます」
「いや」

 彼はぶっきらぼうにそう言いながら洋風のドアを指さした。飴色に磨き込まれた、細工が彫られた重厚そうな扉だ。

「こっちが俺の部屋。横が君」

 そう言って彼は私の部屋の扉を開く。
 洋間のようだ。
 ベッドとドレッサー、空の本棚だけが置かれていた。分厚い、アイヴォリーホワイトのカーテンは開いてある。……なんと、ベッドは天蓋つき。

 お姫様みたい……と、見惚れている間じゃない。

「先生の隣ですか。いいのですか」
「治療のためだ。それと、鍵がかかるのがこのふた部屋だけだ」

 この和風のお家で、洋間はこのふた部屋だけなのかもしれない。

「なるほど、ありがとうございます」

 気を使ってくれたらしい。

「好きに使え」

 それから彼は私に鍵を手渡した。玄関のものだ。
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