天敵外科医さま、いいから黙って偽装婚約しましょうか~愛さないと言った俺様ドクターの激愛が爆発して~【愛され最強ヒロインシリーズ】

「おいしそう」

 思わず漏らすと、香月先生は目を細めこちらを見た。
 ……ドヤ顔してる。

「ちょっと、その顔はなんなんですか。小さい男ね」
「ふん」

 香月先生は満足げに笑い、上品な箸使いでサンマを食べる。ドヤ顔でサンマを見せつけながら食べる香月先生に、私はちょっとムカつきつつも、内心で安堵していた。

 食べられるのは、体調がいい証拠だ。
 これがまたドリンク剤とかになってきたら気をつけないと……。
 いや、ここまで任されているのだ。そうなる前に対処しなくては。

 私は医者だ。
 そして、彼も医者だ。
 私が彼を助けることは、彼によって助けられる人の数が増えるということ。


 これは、誇り高い仕事だ。


「なんだジロジロ見て。やらんぞ」

 私がしみじみしているというのに、香月先生は心底嫌そうに鼻に皺を寄せた。
 結構久しぶりに「あっかんべー」をしたくなる。実行しなかったのは、私の人間力の高さゆえに他ならない。全く、感謝してほしい。

「ところで、この家って先生の持ち家ですか?」

 まあ、香月家のものだろうことは予測がつくのだけれど。

「いや、祖父の家だ。祖母が亡くなるまでは住んでいたんだが、今は駅直結のマンションに引っ越した。脚があまりよくないから、なにかとアクセスがいいほうが便利らしい」
「ああ、なるほど。お祖父様と同居とかは考えにならなかったのですか?」
「俺がなにかと不規則だからな。あまり祖父のペースを乱させたくない」

 なるほど、と頷く。俺様なようで、案外色々考えている人だ。


< 37 / 119 >

この作品をシェア

pagetop